第4回日大アメフト部大麻汚染 「防げた可能性ある」 調査が指摘した問題

大学スポーツを考える

編集委員・中小路徹
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連載「大学スポーツを考える」④

日本大学アメリカンフットボール部の違法薬物事件をはじめ、大学スポーツ界で不祥事が相次いでいる。日大アメフト部は廃部が決まり、新たな受け皿を創設する方針だが、廃部の決定と、事件に関係のない部員を巻き込んだ「連帯責任」についてはどう考えればいいのだろうか。

 違法薬物事件を受けて、アメフト部に対する処分をどうするのか。日大の対応は迷走した。

 昨年8月5日に最初の逮捕者が出ると、日大は同部を無期限の活動停止にしたが、個人の犯罪と判断して5日後に解除した。この経緯について、大学の対応を検証した第三者委員会の調査報告書は「教育の一環としてのスポーツ部活動が健全に行える環境が整ったかどうかを見定めて活動再開の意思決定をするべきだった」と問題視した。

【連載①】運動部の不祥事を考える 40大学が回答 背景や対策、学業基準など

運動部員の不祥事を防ぐため、大学はどう取り組み、どんな問題意識を持っているのか。朝日新聞がスポーツで実績を上げている大学に聞いたところ、学生選手の教育に向き合おうとする回答が多く寄せられました。

 8月22日に2度目の寮の家宅捜索があり、複数部員が任意で取り調べを受けると再び活動停止に。その後、同大は廃部の方針を決める。12月4日の会見で「個人的犯罪ではなく、部の寮(で事件が起き)、集団的、常習的だったのではないか。部の学生や一般学生の安全を担保できない」と説明し、同15日に廃部を正式決定した。

 部の大麻汚染はどんな状況だったのか。日大が学内に設けた「競技部の薬物事件に関する調査及び再発防止策検討委員会」が昨年11月20日付で出した答申書から、それは推察できる。同委員会は昨年8月以前にさかのぼり、経緯を調査している。

 答申書によると、事件が明るみに出る前年の2022年10月、コーチ陣が部員の7割に聞き取りをし、「3人の部員が大麻を吸引している」ことを、1年生が別の1年生から聞いたと報告していた。同年11月には、部の寮で「7月に大麻と思われるものを吸った」と1年生が監督に自己申告した。この部員は聴取に対し、4年生から譲り受けて計4人で数回吸ったほか、他にも4人の部員が吸っていることを4年生から聞かされた、と話した。関係する部員全員から指導陣が聴取したが、「事実関係を確認できなかった」という。

 また、部内のあるコーチは、同委員会のヒアリングに「留学生が大麻を持ち込んだと思う。そこから広がった」と回答している。この留学生は18年の入学のため、答申書は「数年前から問題が起きていたとも推測できる」と指摘。コーチは「寮内では部員同士の統制ができていなかった」とも話しており、学生の自治体制に問題があったこともうかがえる。

 最初に逮捕された部員が違法薬物を使った要因として、答申書は本人の規範意識の欠如を挙げた一方で、「寮内で繰り返し使用されていた経緯があるならば、『重大な問題ではない』と問題行為を軽く考える規範意識の低下が発生したかもしれない」などとし、寮生活の問題を環境的要因として考察しなければならないとしている。

 使用が疑われた事例や、今回の事件の予兆が存在していたことから、「その段階で徹底した調査がなされ、大学として厳然たる対応が実施されていれば、今回の事件も防げた可能性はある」とも同委員会は指摘した。

 では、部全体の責任をどう問うのか。答申書はそうした処分を決定するためのガイドラインの確立を求める。「個人の部員だけ、学外での犯行であれば、チームレベルの処分は必要ないという判断は成り立つが、複数人による犯行、寮生活の中の犯行となれば、現代社会においては活動停止以上の処分の検討が必要になる」と提言している。(編集委員・中小路徹

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