「生命に感謝」 捕獲から調理、販売まで手がけるイノシシ料理店店長

西本秀
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 「ししかつ」「ししころ」「しし竜田」――。店先の棚にイノシシ肉を使ったメンチカツ(350円)やコロッケ(250円)、竜田揚げ(520円)などの総菜が並ぶ。

 昨年8月、広島県福山市郊外にオープンしたテイクアウト(持ち帰り)専門のイノシシ料理店。店名の「ジビ家(エ)」は、狩猟肉を意味するフランス語の「ジビエ」をもじって名付けられた。

 食材は、店長を務める三島香織さん(28)が父親の議信(のりのぶ)さん(53)とともに捕獲罠(わな)や猟銃を使って仕留めたイノシシ肉だ。商品名も店名も、やわらかな印象があるだけに、初めて来店した客の多くは、本人が調理も狩猟もしていると聞いて驚く。

 父親の趣味だった狩猟に同行するようになったのは中学生のころ。「最初は恐る恐るだったけど、いつか好奇心に変わった」。父親が仕留めたカモを回収して、羽根をむしる作業も現場で学んだ。

 高校を卒業して調理師免許を取得し、焼き肉店で働いてきた。いつか店を開きたいという思いと、子どものころの経験がつながり、自身も狩猟の免許などを取得。冬場になると父親と共に山に通った。

 イノシシが頻繁に市街地に出没し、捕獲後の活用が課題になっている。だが、イノシシ肉は「臭い」と敬遠する人が少なくない。消費が進まない現状を、もどかしく感じてきた。

 「血抜きなど適切な処理をして、決められた手順でさばいたイノシシ肉のおいしさを知ってほしい」。メニュー開発のために、スパイスの配合や調理法など試行錯誤を重ねた。

 オススメは130グラムの大きなパティをはさんだ「ししバーガー」(700円)。大粒のひき肉をかむと肉のうまみがしみ出る。

 店内で着るユニホームの背中には、「すべての生命に感謝を」という筆書きの文字が刷られている。捕獲から調理、販売まで手がけるからこそ、この気持ちを忘れずにいたい。西本秀

     ◇

 「ジビ家」の営業時間は月曜~土曜の午前11時~午後6時。日曜・祝日は定休。イノシシ肉を普及しようと、弁当の販売や、地域の学校のお祭りなどへの出店も計画している。住所は広島県福山市三吉町3丁目10の7。電話は084・999・5601。

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