永瀬九段が朝日杯優勝 羽生&佐藤九段の新旧会長、解説で感嘆連発
第17回朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)の準決勝が10日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールで始まり、大盤解説会に佐藤康光九段と安食総子女流二段が登壇した。
準決勝は藤井聡太名人・竜王―糸谷哲郎八段戦と、永瀬拓矢九段―西田拓也五段戦。二つの大盤を行き来しながらの解説も名物になっている。
さっそく話題は藤井聡太名人・竜王の活躍になり、佐藤康光九段は「藤井聡太名人・竜王が『勝てる可能性がある対局数』が42局あるんですが、そのうち41勝しているんですよ。負けたのが銀河戦の決勝戦だけ。怖いですよね」と驚異のデータを紹介した。タイトル戦は例えば七番勝負だと、4勝までしかできない。タイトルをすべて獲得した上で、トーナメント戦も銀河戦決勝以外すべて勝っていることになる。
先に決勝進出を決めたのは藤井名人・竜王。自陣が薄い状況で踏み込んでいった。佐藤九段は「この辺がちょっと常人ではない感じ。自陣がこの状況では、ついつい違う手を指してしまいます」と感嘆した。「読み切っちゃうのがすごいですね。私なら慌ててます」
終局後、大盤解説会に両対局者が登壇。勝った藤井名人・竜王は最終盤について「玉が危険な状態が続いて、秒読みでは分からなかったんですが、こちらとしても竜2枚を抑えられるときつくなるので、やむを得ないかなと思っていました」と振り返った。
敗れた糸谷八段は「最後何かあったかと思ったんですが、分からなくて。最後の一押しが考えつきませんでした。こんな分からないのは珍しいぐらい分からなかった」と難解な最終盤を表現した。
最後に決勝の意気込みを問われた藤井名人・竜王だったが、永瀬九段―西田五段戦は入玉模様の将棋に。盤上を映したモニターを見つめて「えーとどうなんでしょう。これは長そうですね」と解説者モードに。「しばらくはこの対局を観戦しようかと思います」と会場をわかせた。
予言の通り、永瀬九段―西田五段戦は西田五段が入玉し、永瀬九段の玉も穴熊から入玉を目指す長手数の展開に。持将棋(引き分け)には西田五段の点数(駒の数)が足らず、永瀬九段の玉も詰まないことから、西田五段が219手で投了した。
解説会場に姿を現した永瀬九段は「入玉を阻止するべきか迷ったんですが……。阻止する順の方が正しかったのかも知れません」。決勝に向けて「時間は少ししかありませんが、しっかり準備したいと思います」と疲れも見せずに語った。
西田五段は「入玉を目指す展開になって、大駒を全部取られると点数負けになる。届かない将棋になってしまった」と話した。
準決勝が長引いたため、決勝戦は予定より30分遅れの午後2時45分から始まった。準決勝で敗れた糸谷八段と西田五段が恒例の「敗者の解説者」として登壇。2人は同じ森信雄七段門下で、糸谷八段は「きょう何の日かしっていますか。森信雄の誕生日。(弟子の)2人、負けたんですけど」と自虐的に語り、笑いを誘った。
「さっき知った」という糸谷八段に「僕は知ってたんですけど」と西田五段が冷静に切り返し、「厳しいですね、世の中は」と糸谷八段。「なかなかうまくいかないですね」と西田五段もぼやき、会場を盛り上げた。
その後、日本将棋連盟会長でもある羽生善治九段がゲストで登場。前会長の佐藤康光九段とのダブル解説に、来場者からたくさんのカメラが向けられた。
2人は対局者の指し手に「おお」「ええー!」を連発した。
「うわー打ちましたよ」(佐藤九段)
「すごいですね……。勝負しにいってるんですかね」(羽生九段)
「これはすごいですね」(佐藤九段)
「相手、藤井さんですしね」(羽生九段)
豪華な2人の解説に多くの拍手が送られた。
対局は永瀬九段が勝利した。敗れた藤井名人・竜王は「途中で残り時間が39分対1分のようになって(実際は38分対2分)、厳しいかなと思ってやっていました。中終盤で際どいかなと思っていたのですが、最後崩れてしまったので残念です」とあいさつ。
一方、勝った永瀬九段は「予定(の進行)だったので、きょうは持ち時間40分の棋戦なので、(時間を)温存してと思いました」と話した。(高津祐典)
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