第2回アカハラ認定の元東大教授「愛情持って接してきた」 処分無効を訴え

 東大大学院博士課程に在籍していたユミさんへの「指導放置」がアカデミックハラスメントにあたると認定され、停職1カ月の処分を受けた教授(当時)が昨年8月下旬、東大を東京地裁に訴えた。処分の無効と、主に研究者としての環境を失ったなどとして、約2200万円の損害賠償などを求めている。

 教授側と東大側はそれぞれ、この処分をどうみているのか。

 訴状などによると、ユミさんが2015年に博士課程に進学した当初は、博士号ではなく、教員免許の取得をめざすと教授に伝えていたという。

 体調不良をきっかけに18年から休学が続いていたが、20年2月に「研究への気持ちが少し回復しています」と教授にメールで伝えた。日本語教師になりたいと資格試験を受けた20年10月末から、博士論文執筆資格審査に向けた本格的な準備に取りかかったという。

 教授とユミさんは20年2月から21年3月までの間に、計94通のメールを交わしていたという。大学は処分に際し、20年8月から21年3月までの13通のメールのやりとりを根拠にアカハラを認定した。

 教授側は「13通だけを取り上げて指導を放置したと決め付けた」と主張する。94通のメールを詳しく分析すれば、「一貫して大学教員として懇切丁寧に指導を行ってきたことは明らか」だとする。

 そもそも休学中の学生の指導については、東大の学内規則のどこにも見当たらず、指導義務があるとするならば、具体的な根拠を明らかにしてほしいと訴える。

処分を受け「心身ともに強い衝撃」

 20年8月に教授がユミさんに、博士論文完成に向けた予定は「一切引き延ばさないことを大前提に」とメールを送ったことについては、そもそも21年3月末という目標を設定したのはユミさんであり、残りの在学年限が2年となる中で、博士論文の完成をめざすよう「激励した」と反論。いつ出すかは「全て学生の自由な意思に委ねられている」と主張する。

 またユミさんが博士論文の執筆に必要な「文献リスト」の第1弾を送ったのは20年11月末だが、論文の提出の要件として求められる説明文が付いていなかったという。

 博士論文の「核」となる概要をユミさんが送ってきたのは21年1月25日だが、その後も修正を繰り返しており、提出要件を満たす主要な書類がそろったのは、教授が指導のメールを送った3月7日の前日、6日だったと説明する。

 教授の方から博士論文の概要の進捗(しんちょく)状況や提出の見込みをユミさんに尋ねることは、「心理的負担をかけるおそれ」があるため、躊躇(ちゅうちょ)していたという。

 教授はユミさんが修士課程に入学以来、8年にわたって成長を見守りつつ、愛情をもって接してきたと主張する。だが、そのすべてが否定されるような処分を受け、「心身ともに強い衝撃を受け、体調を崩した」と訴える。

 加えて、処分により定年後に内定していた特任研究員や非常勤講師、名誉教授などの職がすべてなくなり、研究の継続に打撃を受けたという。

 一方、東大側の代理人弁護士は「教授に対する懲戒処分は、厳正かつ適切になされたものであり、教授の訴えは不当である」と主張する。

東大報告書「不適切であると言わざるを得ない」

 東大懲戒委員会の調査報告書…

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