奈良の「神仏習合」でクセ酒誕生 「日本食には合わん」その味は

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上田真美
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カンサイのカイシャ ここがオモロイ!

 酒の神様を奉る神社で採った酵母と、由緒ある寺院の日記に記された製法をもとにした「神仏習合」の日本酒を造る酒造会社が、奈良県宇陀市にあります。ただ、杜氏(とうじ)を務める社長は「日本食には全く合わん」と断言。日本酒らしくない、個性的すぎるそのお味は、いかに。

なぜこんな味に

 「今となっては真面目やないわな。あほなことして遊んでます」。芳村酒造の芳村隆博社長(70)は開口一番、そう言って笑った。

 「神仏習合の酒」は、酒造りの神様として知られる大神(おおみわ)神社(奈良県桜井市)のササユリから採取された「山乃(やまの)かみ酵母」を用い、興福寺奈良市)の僧侶らが室町後期から江戸初期にかけて記した「多聞院(たもんいん)日記」に出てくる技法をもとに造られた日本酒だ。

 清酒発祥の地とされる奈良。その奈良を代表する社寺の組み合わせ。さぞかし奈良らしいお酒だろう、と思いきや……。

 グラスに注がれた酒は一目でわかる琥珀(こはく)色。口を近づけると独特の香りがする。そして、どっしりした甘みと酸味。記者のイメージしていた日本酒とは随分違う。

 芳村社長は「紹興酒に砂糖を入れた味、というのが一番近い。同業者には『みりんや』『こんなもん飲めるか』、ぼろくそ言われたな」。

 なぜこんな味になったのか。

 日本酒を仕込む際は玄米を磨…

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    清水謙司
    (朝日新聞記者=歴史・寺社文化財など)
    2024年1月28日10時30分 投稿
    【視点】

    おもろうまそうなお酒と、それを醸す洒落た社長さんを取り上げたこの記事。お酒や奈良が好きな人にはもちろん、社寺・記紀万葉・考古学に関心のある方々にも刺さったのではないでしょうか。その一人として、気づきを少し。    学生のころ、ほんのちょっと

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