疎い分野は「取り付く島」を探して 天声人語の元筆者も悩みながら

有料記事新聞記者の文章術

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文化部・有田哲文

 昨年の9月末まで「天声人語」を担当しました。日々のコラムは、専ら取材に基づいて記事を書くそれまでの仕事とは、まったく違う頭の使い方を求められたように思います。毎日のニュースからテーマを選び、自分なりの味わいを加えられないかと、いつも思案していました。

 取材したことのあるテーマを選ぶ場合もありますが、そこにとどまっていてはコラムを書き続けることはできません。2021年、プロ野球でヤクルトとオリックスがともに最下位から優勝したのは、取り上げるべき大きな出来事だと考えました。しかし残念ながら、私はスポーツにも野球にも疎いのです。

 いわば「取り付く島がない」状態です。無理やり書いたとしても、熱量の低い文章になってしまうでしょう。小さくてもいい、取り付ける島はないものか。新聞をよく読みました。

 するとヤクルトの監督である高津臣吾(しんご)さんが、故野村克也さんの教え子だったことが分かりました。私も取材キャップをしていたとき、同僚のまとめ方、励まし方に悩み、野村さんの本にヒントを求めた経験があります。

 ともに野村さんに教えをうけたという点では重なる部分があるのではないか。そう考えると、何か書けるような気がしてきました。プロスポーツの大きなストーリーに、自分の小さなストーリーを重ねる。むかし読んだ本を探して読み返しました。

文末に取り上げた文章へのリンクがあります

 文章とは怖いもので、自分が…

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