次のトレンドはIT×高齢者=「エイジテック」 AI進化で急成長

ラスベガス=小林哲
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 米ラスベガスで1月に開かれた先端技術の見本市「CES2024」では、高齢者向けの「エイジテック」や、誰にとっても利用しやすい「アクセシビリティー」をうたった新技術に注目が集まった。

 金融サービスとITを組み合わせたフィンテックが急伸したように、この先10年の新たなトレンドになると関係者は期待する。

 オランダスタートアップ企業が開発した音声支援アプリ「Whispp(ウィスプ)」は、スマホの機能を利用して、病気や老化でうまく声を出せなくなった人を助けてくれる。

 CESの主催団体CTAが昨年、独創的な技術を表彰する「イノベーション・アワード」の一つに選んだ。展示ブースには、マイクロソフトのサティア・ナデラCEO(最高経営責任者)が視察に訪れるなど注目を集めた。

 AIに本人の声色を学習させておくことで、ささやくような声やしゃがれ声でも、スマホに話しかけた音声を本来の自然な声色に変換して返してくれる。

 AIに入力する声色データは、10~15通りの文章を読み上げた音声があればよい。咽頭(いんとう)がんなどで声が出せなくなった人でも、ホームビデオなどの動画に声が残っていればデータとして使える。吃音(きつおん)症の人がささやくように話すことで、リラックスしてうまく話せる効果も期待できるという。

 アプリは英語とオランダ語用で、無料でダウンロードして利用できる(https://whispp.com/別ウインドウで開きます)。電話の通話音声をリアルタイムに変換するサービスは有料。日本語への対応も進めているという。

 音声合成のプログラミングなどを担当する松島竜成さんは現地の大学院に留学後、チームに加わった。「高齢化が進む日本でもニーズはたくさんあるはず。将来は携帯電話の大手キャリアと提携して、すべてのスマホで使えるようにしたい」と話している。

 CESの会場にはほかにも、相手の話した言葉を文字起こししてリアルタイムで視野に映すメガネ型の装置や、ノイズキャンセリングの原理を応用して手の震えを打ち消してくれるグローブなどユニークな装置が展示された。特設ブースを設けた高齢者団体AARPによると、エイジテックが対象とする50歳以上による経済効果は、2050年までに世界全体で100兆ドルに達する可能性があるという。(ラスベガス=小林哲

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