「SOTA」と書かれた緑色のバナーが、会場中で揺れていた。多くのファンが思ったに違いない。
「ここまで戻ってきてくれた」
昨年12月、長野で開催された全日本フィギュアスケート選手権。男子フリーで会心の演技を見せたのは、山本草太(24)=中京大=だ。
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2日前にあったショートプログラム(SP)で2位につけ、この日は最終グループの第5滑走だった。直前には同組のライバルたちが、ほぼミスのない「神演技」を次々に披露していた。
表彰台を狙うにはミスは許されない。厳しい状況に置かれた山本は、しかし、重圧を軽やかにはね返した。
演目は「エクソジェネシス交響曲第3番」。芸術家肌のスケーター、ジェレミー・アボット(米)が2014年ソチ五輪のシーズンに使用した名プログラムだ。
3本の4回転ジャンプ、代名詞の美しいイナバウアー、スピン……。山本は演技中、手応えの詰まった右拳で何度もガッツポーズをつくった。
割れるような大歓声の中、総合3位。全日本挑戦10回目で、初めて念願の表彰台に上がった。
万感のガッツポーズに、越えてきた激しい起伏を思わずにはいられない。
私が初めて山本の滑りを見たのは、もう10年以上前のことになる。彼は当時、まだ小学生だった。
天性の伸びやかなスケーティ…
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