「コロナ禍で旬」信じ450万円 PCR検査詐欺、20代男性の後悔

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 PCR検査事業をかたる投資詐欺事件で、警視庁に詐欺や金融商品取引法違反の疑いで逮捕された健康関連ベンチャー企業(東京都)代表取締役の男性(44)らが、「1カ月あたり出資額の2~8%の現金を支払う」などと出資者に持ちかけていたことがわかった。2022年3~11月に、18都府県の135人から32億円超を集めたという。

 生活経済課は他に投資会社代表取締役の入江正和容疑者(50)、投資会社代表取締役の曽我郁人容疑者(29)ら5人を逮捕し、18日に発表した。曽我容疑者が代表の会社「Dave」(東京都)も18日、金商法違反の両罰規定で書類送検した。

 男性らは共謀して22年7~8月ごろ、PCR検査キットの販売事業を実施する意思がないのに、都内の会社役員ら3人に同事業への出資を持ちかけ、計6千万円をだまし取った疑いがある。国の登録がないのに、この会社役員ら5人を勧誘して計約3億7千万円を集めた疑いもある。

 出資者へは、出資金で検査キットを購入し、無料PCR検査場を運営するベンチャー企業が購入・運用して利益を上げると説明していた。同課は、32億円の大半は、別の投資案件への返済にあてられたとみている。

「めちゃくちゃ面白い話がある」

 450万円を出資したという都内の20代の会社員男性が取材に応じた。

 「ベンチャー企業の名前で信じてしまった。まさか詐欺とは思わなかった」と話す。当時はコロナ禍で、このベンチャー企業はPCR・抗原検査キットの販売で業績を伸ばしていた。メディアにも度々取り上げられていた。

 「PCR検査事業」への投資に誘われたのは22年夏ごろ。コロナの「第7波」の時期だった。高校の先輩に「めちゃくちゃ面白い話がある」と誘われ、ある会社の経営者と港区の事務所で会った。

 このベンチャー企業は近く株式上場を予定しており、そのための資金を集めている。同社のPCR検査キットに投資すれば、毎月2%程度の配当が得られる――。そんな説明だった。「都の補助金が出る」「コロナ禍の今が旬だ」と勧められた。

配当金は一度も払われず

 「設立から2年で上場しようとするなんて、すごい会社だ」。預金のほぼ全額にあたる450万円の出資を決めた。

 しかし、配当が支払われる気配はなかった。経営者らに問い合わせても、「確認する」というばかりで次第に連絡もとれなくなった。

 渡された資料に曽我郁人容疑者の名前があり、曽我容疑者が代表の会社も訪ねた。応対した人から曽我容疑者の携帯番号を教えられたが、メッセージを送ると「弁護士を通してほしい」と返信があるだけだった。

 契約書は経営者に預かられ、手元にない。出資したことを証明するのは、銀行の振り込み明細とメッセージの履歴のみという。警察には相談できていない。諦めざるを得ないと思うものの、なんとか金が戻らないかという思いも消えないという。御船紗子

     ◇

〈おことわり〉東京地検は詐欺と金融商品取引法違反の疑いで逮捕された健康関連ベンチャー企業の代表取締役の男性(44)について、2月27日付で不起訴処分とした。

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