輪島火災「神戸思い出させた」 消防車出せない現場も…大震災の記憶

阪神・淡路大震災

長富由希子
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 1月1日夕に能登地方を襲った最大震度7の地震。神戸市の元消防士、鍵本敦さん(61)は石川県輪島市の火災のテレビ映像に釘付けになった。木造家屋の密集地が延焼する様子は「神戸を思い出させた」と話す。

 1995年1月17日の阪神・淡路大震災後に「同時多発火災」が起きた神戸市長田区で当時、地元消防署の当直長だった。消火は困難を極めた。

 午前5時46分の発災直後、仮眠室から1階に駆け下りると、署の近隣2カ所で火の手が上がっていた。管制室に応援を要請した。

 隊員で手分けして消火活動中にも新たな火災の発生連絡が止まらない。

 家屋の下敷きになっている住民も多い。「長田署だけでは無理だ」。管制室に繰り返し応援を頼んだが、返ってきたのは「市内で災害多発。管内は長田で対応せよ」。

 管制室では、地震直後から、計118回線ある119番の着信表示板が一斉点灯。市内では午前7時までに火災64件が発生し、家屋倒壊も多数。限られた消防力をどこに投入すべきか。発災直後の管制室には、情報収集の時間が必要だった。

 長田区内では午前7時までに火災13件が発生。署のポンプ車は5台。応援部隊が来るまで、1台も出せない現場が出るのは明らかだった。

 神戸市消防局の消防士たちは全力で消火にあたったが、地震後10日間で175件の火災が起きて7045棟が全半焼。529人の遺体が見つかった。

 鍵本さんは「阪神大震災が起きるまで行政も市民も神戸に大地震が来るとは思っておらず、十分に備えていなかった。それが一番の教訓です。震災を経験した者として、死ぬまで語らなあかんと思っています」と話す。長富由希子

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