「オムツがない」 災害時に乳幼児と避難、ポリ袋・タオル…代用方法

能登半島地震

聞き手・平井恵美
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 災害時に避難所などでの避難生活が長引くと、体調を崩したり、備蓄がなくなったりして深刻な状況に陥ります。必要な支援物資もすぐに届かない時、どうしたらいいのでしょうか? 乳幼児と一緒の避難でオムツなどがない時の代用方法や、子どもの体調を維持するための注意点について日本災害医学会の小児科医、岬美穂さんに話を聞きました。

 ――避難生活でオムツなどの育児用品がない場合、対処する方法はありますか。

 応急処置として、ポリ袋とタオルを使ってオムツの代用品はつくれます。袋の持ち手の端と側面をハサミで切って、タオルを載せたあとに、持ち手を赤ちゃんのおなかのところで結ぶだけです。

写真・図版

 哺乳瓶がない時は、紙コップで代用できます。誤嚥(ごえん)を防ぐため赤ちゃんは縦抱きにして、紙コップを下唇に当てて少しずつ飲ませてください。月齢が低い赤ちゃんの場合、舌でペロペロなめるように飲むので時間がかかりますが、赤ちゃんのペースに合わせることが大事。紙コップの他に、スプーンを使ってあげることもできます。

避難先での母乳育児 しっかり食べて力を

 ――避難生活では手に入る食べ物も限られています。

 被災してしばらくは弁当や菓子パン、インスタント食品などしか入手できないかもしれません。しかし、栄養バランスよりも、しっかり食べて力をつけることの方が重要です。

 母乳育児の方も心配はいりません。ママが十分に食べていなくても、母乳には赤ちゃんに必要な栄養が入っています。「母乳の質が下がるかも」などと心配せずに、手に入る食べ物をしっかり食べて必要なエネルギーを取ってください。

 不安やストレスを抱え、「母乳の出が悪くなった」と感じる人もいるかもしれませんが、赤ちゃんが欲しがるだけ飲ませてください。授乳は母子の安心感にもつながりますので、続けるメリットがあります。

ミルクがない! 赤ちゃんの脱水を防ぐには?

 ――被災地ではミルクが手に入らないこともあります。

 母乳やミルクなど赤ちゃんに与えるものが何もない場合、脱水や低血糖を防ぐために砂糖水を飲ませてあげてください。だいたいコップ1杯(約200ミリリットル)の湯冷ましに砂糖をスプーン1杯(大さじ1)の目安です。ただ、あくまでも一時しのぎの対応です。

 日本新生児成育医学会は災害時の対応として、生後6カ月過ぎの赤ちゃんの場合、「ごはんやバナナをつぶしてお湯で延ばすなど離乳食で補う。赤ちゃんせんべいをお湯で溶いても大丈夫」と説明しています。

 ――避難所などで過ごす場合、離乳食に活用できそうなものはありますか。

 ポリ袋があれば、そこに食材と少しの水分を加えて手でよくつぶし、離乳食にできます。子どもの離乳食の進み具合に応じて、硬さや大きさを調整してください。汁物に入っている大根やにんじんなどの野菜、ご飯、バナナなどの果物も使えます。ただ、アレルギー防止のため、口にしたことがない食材を与える時は注意が必要です。

お風呂に入れない 汚れふきとって

 ――子どもの健康を守るため、冬の避難所などでできる対策はありますか。

 寒さから身を守るため、避難所では床に段ボールや新聞紙を敷いて、直接床に触れないようにしてください。子どもは肌が出ないように帽子や靴下も身につける。もし、雨や雪で髪がぬれたら、しっかり乾かしてください。周りにある物を使って子どもをくるみ、親子で抱き合って寝るのも効果的です。

 断水などでお風呂に入れない場合もあるかと思います。手洗いを心がけ、お湯で絞ったタオルやぬれたティッシュで汚れやすいおしりや口まわり、肌荒れしやすい関節周りを中心にふきとってあげるとよいと思います。

 ――子どもが体調を崩した時、どんな症状に気をつければよいですか。

 病院を受診した子どもたちに日ごろ尋ねるポイントは、「眠れていますか」「食べられていますか」です。呼吸状態が悪くて夜間、眠れなかったり、食べ物や水分が取れずぐったりしていたりする場合、すぐに周りの医療スタッフに相談したり、病院を受診したりしてください。

 ――災害時の子育て家庭への支援について、課題に感じることはありますか。

 日本は災害が起こる度に課題を抽出し、改善をしてきたので、東日本大震災の頃と比べたら、子育て家庭に対する支援にも目が向けられてきたと思います。とはいえ、被災者全体からみると子育て家庭は少数で、高齢者や障害者の支援が優先されがちです。子育て家庭の中には、「まだ若いし大丈夫」と支援を遠慮する方もいます。でも、支援が本当に必要な時は声をあげてください。

 大災害では理想どおりの避難所運営は難しいこともありますが、子育て家庭にも配慮して女性専用の更衣室や授乳室、子どもたちが遊べる場所などは避難所に必要です。同じ子育て中の親どうしがつながり、助け合える場も大事です。子育て家庭のニーズを拾い上げ、支援につなげてほしいと思います。(聞き手・平井恵美)

 ◆日本新生児成育医学会のサイトでは、「被災地の避難所などで生活をする赤ちゃんのためのQ&A」を公開しています。英語や中国語、ポルトガル語などでも見られます。

https://jsnhd.or.jp/doctor/saigai/index.html別ウインドウで開きます

          ◇

 みさき・みほ 小児科専門医、救急科専門医。半蔵門のびすここどもクリニック院長、日本災害医学会の小児周産期領域災害対策検討委員会委員長。災害派遣医療チーム(DMAT)の研修や災害時の運用調整を担う国立病院機構本部DMAT事務局の職務も兼務。

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