第6回「ホース捨て逃げろ」大震災、限界見た消防士 他県からの応援隊に涙

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 石川県能登地方を1月1日に襲った最大震度7の地震では、輪島市で大規模な火災が起きた。大地震後の火災では、消火が困難になるケースが少なくない。1995年の阪神・淡路大震災で「同時多発火災」に直面した神戸市の長田消防署の当直長だった鍵本敦さん(61、当時32)に経験を聞いた。「大地震を誰も想定しておらず、発災後は出来ることを全てやるしかなかった」という。

    ◇

 あの大地震の前日、1995年1月16日は、午前9時半に長田消防署に出勤して、そこから24時間勤務の予定でした。高速道路の事故や住宅火災で忙しく、17日午前5時ごろ、ようやく隊員と仮眠をとり始めた。その時点でみんな既に疲れ切っていたんです。

 2階の大部屋でうつらうつらしていたら、「ドーンッ」という衝撃があり、「とんでもなくでっかいトレーラーが庁舎にぶつかった」と思いました。横揺れで地震だとわかりました。

 「地震が起きたら火事になる」と教科書的に習っていたので、「火事があるぞ!」と叫びながら1階に駆け下りました。

 すると、1階にいた職員が「火事です」と。消防署の目の前が、すでに炎上していました。

 地震の大揺れで、はしご車や救急車がシャッターにぶつかり、車庫はとんでもない状況でした。出動するために、車を後ろに下げて、やっとの思いでシャッターを開けると、北西方向にも別の火災が見えて、「もう一件起こっとうで」となったんです。

 隊員を二手に分け、私は北西の現場に向かいました。当初見えていたのはこの二つの火災だけ。長田消防署の当直は24人で、ポンプ車は5台。「火災2件なら何とかなるかな」という思いでした。

記事には、阪神・淡路大震災の遺族や消防士らの証言を元に、被災状況を再現した詳細な描写が含まれます。

神戸じゅうで火災 出せない応援

 誤算は、現場で消火栓にホー…

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