満州には「行きとうない」96歳の亀じいの言葉 「なぜ」たどる家族

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西本秀
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 広島県福山市引野町の小学6年生、三好優芽(ゆめ)さん(11)の曽祖父、亀一(かめいち)さんが亡くなったのは昨年1月だった。享年96歳。まもなく一周忌を迎える。

 優芽さんたち家族から、「亀じい」と呼ばれていた亀一さんの左手の小指は少し曲がり、まっすぐに伸ばせなかった。

 かつて抑留された旧ソ連シベリアの炭鉱で、けがをしたのだ。厳寒の異国はつらい思い出のはずだが、亀一さんは認知症を患った晩年も「シベリアに行きたい」と口にした。

 一方で、抑留前に少年時代を過ごした中国東北部旧満州については、なぜか「行きとうない」と語ったという。

 大正が終わり、昭和元年となる1926年の生まれだ。農家の三男坊で、満州に渡ったのは、日中戦争さなかの14歳のときだった。日本政府が男子に参加を呼びかけた「満蒙開拓青少年義勇軍」に志願した。

 亀じいは戦争で何を経験したのだろう――。亡くなった後になって、優芽さんたち家族はそう考えるようになった。「私とあまり変わらない年齢で、なぜ満州に行ったのか、知りたい」

 この1年、家族はその疑問と向き合ってきた。

数少ない存命の隊員

 「そばにいながら、娘として、父の話を聞かずにいた。隊員たちの思いを聞かせてください」

 昨年11月、亀一さんの娘の…

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