第1回軍用地を買って国に貸す 沖縄で浸透、「株より安心」と人気の一方で

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 沖縄県米軍基地関連で働く女性(60)は、県内4カ所の「軍用地」を所有し、国から年間で計約165万円の「賃借料」を得る「軍用地主」だ。

 地主になったきっかけは2008年のリーマン・ショック。給料をためては買ってきた株に損が出た。

 まず、09年に株などを売って得た約1200万円で買ったのは、那覇空港の土地約83平方メートルだった。

 那覇空港は戦後も米空軍などが使い、本土復帰後の1975年に返還された。その後、自衛隊と民間航空会社が共用する。国内の公共飛行場は原則国有地だが、那覇空港は約500ヘクタールの約5分の1が民有地で、この部分が売買される。土地は国が借り上げて、所有者に賃借料が支払われる。

 国土の0・6%に国内の米軍専用施設の7割が集中する沖縄県。その土地の一部は民間の土地を借りて運営しているのが特徴だ。そのため軍用地は、沖縄では個人でも売買し、新聞広告に載るほど身近な「金融商品」になっている。那覇空港の土地も歴史的な経緯を踏まえ、同じように取引する対象となっている。

 売り出し時の価格は年間賃借料の何倍かで示される。約33万円が入る女性の那覇空港の土地は、購入当時は「36倍」だった。購入価格が賃借料の36年分にあたることを意味する。利回りにすると約2・8%だ。

 その那覇空港はいま、値上がりして60倍前後で売り出されている。60倍だと利回りは約1・7%程度。価格が上がるとその分、利回りは下がるが、預貯金にほとんど金利がつかない中、比較的有利と見る投資家が支えてきた。女性は「那覇空港が地主に返されることは考えにくい。人気が高いのは、確実に賃借料が入るところにあると思う」と話す。

地銀やJAバンクに「軍用地主ローン」

 女性はその後、11年に浦添…

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    田幸香純
    (朝日新聞記者=働き方、企業、消費)
    2024年1月12日23時35分 投稿
    【視点】

    配信が少し前の記事なりますが、コメントします。沖縄の米軍基地は常に、論争の的になってきていました。それが、投資という観点からこのような動きになっているとは驚きです。軍用地に投資している人の多くは「基地の返還」を想定していません。不動産会社が

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