頓挫した事業になぜ さいたま市PTA協の不明瞭会計、疑問は今も

小林未来
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 さいたま市PTA協議会(市P協)で1千万円を超える使途不明金があるらしい――。今年2月ごろ、こんなうわさを聞き、にわかには信じられなかった。

 詳細が判明したのは翌3月だった。

 2019~22年度に内容が不明瞭な「防災事業委託費」が計約1080万円支払われていたと、市P協が発表した。関係者によると、支払先は市内の保険代理店だったが、どんな事業なのか現役役員は知らず、契約書も残されていなかった。

 市P協が2月に代理店側に尋ねたところ、「防災備品の購入や児童向けイベント開催費として金銭を預かったが、コロナ禍や事業費の高騰で事業が頓挫した」と回答があり、間もなく全額が返金されたという。

 市P協には、市内の小中学校158校のPTAが加入している。なぜ、頓挫した事業の委託を4年間も続けたのか。誰がどのように出金したのか。決算を通す時に誰も疑問に思わなかったのか――。

 第三者委員会が詳細を調査中だが、こうした疑問は今も宙に浮いたままだ。

 役員経験者のひとりは、「一部の幹部の決定で物事が動いてしまう側面があった。多くの役員には詳しい事情が知らされず、チェックできなかった」と話す。

 役員には各校のPTA会長ら20~30人程度が就き、任期は1年。再任は可能(会長は最長3年)だが、子どもが卒業すれば原則、会員資格を失い、役員にもなれない。

 別の役員経験者は「毎年多くの役員が入れ替わるなかで、決算への疑問を指摘できるほど事業に精通している人が少なかった。理事会や総会での議論が形骸化していたことも要因の一つではないか」とみる。

 郡島典幸会長は「第三者委の調査結果が出れば開示し、問題が指摘されれば、会計処理を適正化し再発防止策を講じる」と話す。

 市P協の一般会計の年間予算規模は約1200万円にのぼる。その原資は、保護者から集めた会費や、保護者に団体保険への加入を案内することで損害保険会社から得た手数料収入などだ。

 会員の保護者にとっては、いわば「私たちのお金」を預かる団体。過去のうみを出し切り、運営の透明性を高める取り組みを期待したい。小林未来

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