時代とともに「世界」は変わる 編集長が語った老舗論壇誌の生きる道

有料記事メディア・公共

聞き手・佐藤美鈴
[PR]

 創刊78年を迎える岩波書店の論壇誌「世界」が生まれ変わる。女性や若い世代の読者にも身近に感じてもらえるよう、12月8日発売の1月号からデザインを一新。ジェンダーやAIといったテーマも取り上げ、足元からの視点を重視していく。「自分はよい読者ではなかった」という堀由貴子編集長(38)が語る、四半世紀ぶりのリニューアルの背景、デジタル時代だからこその役割とは。

 ――なぜこのタイミングでリニューアルを?

 より多くの人に、自分に語りかけている雑誌だと思ってもらえるものにしたい、と考えました。昨年10月の編集長就任にあたって、「世界」を“自分のもの”と感じられる雑誌にしたかった。特に女性の読者に身近に置いてもらえる、カバンに入れてたずさえてもらえるように。そう思ったことが背景にあります。

 実は自分自身も、「世界」のよい読者ではなかった。まずそこから出発しないといけない、と思いました。

 ――よい読者ではない? どういうことでしょう。

 2009年に入社してすぐ「世界」編集部に配属になり、約8年間、所属しました。編集会議は本当に面白くて刺激的で、生意気なことを言って何度も先輩方にあきれられましたが、たがいに率直に指摘しあえる、包容力ある環境でした。インタビューやそれぞれの企画を通して貴重な出会いも多く、編集部に強い愛着をもっていましたが、そんな自分でも、表紙から裏表紙まで、雑誌を全部読んだことがなかった。

 ――自分のものと感じられない、最後まで読めなかった、のはなぜだと思いますか。

 一つは、もちろん女性の書き…

この記事は有料記事です。残り3175文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    佐藤美鈴
    (朝日新聞Re:Ron編集長)
    2023年12月11日12時21分 投稿
    【視点】

    「世界」編集長の堀由貴子さんが語った問題意識とリニューアルには、朝日新聞デジタルにこの春立ち上げた言論サイトRe:Ron(リロン)の模索と重なるものが多くありました。 特にこれまでの課題の裏返しでもある「女性や若い世代の読者にも身近に感じ

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    仲村和代
    (朝日新聞社会部次長)
    2023年12月14日14時35分 投稿
    【視点】

    従来「最優先」とされていたテーマに対して、子育てや労働など、自分たちにとって身近な問題が二の次にされてしまうーー。編集に関わっている人自身がそう感じてしまう問題は、新聞社にも共通しているように思います。朝日新聞社に入社して20年経ちますが、

    …続きを読む
Re:Ron

Re:Ron

対話を通じて「論」を深め合う。論考やインタビューなど様々な言葉を通して世界を広げる。そんな場をRe:Ronはめざします。[もっと見る]