傷ついた小国を苦しめる国際政治の冷徹さ ナゴルノ住民が感じた孤独

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アルメニア南東部コルニゾール=中川仁樹 アルメニア南部シュニク地方=中川仁樹
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 急ながけの下に小さな橋と検問所が見えた。アゼルバイジャンとの国境だ。橋の向こう側では山を削り、道路や建物の建設も進む。

 アルメニア南東部の国境の町コルニゾール。橋の反対側には、2020年にアゼルバイジャンが同国領ナゴルノ・カラバフを攻撃した結果、アルメニア人勢力から奪い返した土地がある。

 一族が数世紀にわたりナゴルノ・カラバフに住んでいたアラさん(24)は、アルメニア系組織が「降伏」した今年9月、この町に避難した。橋の反対側を指さして、「あそこにも軍事施設がつくられました。彼らはここも狙っています」と、心配そうな顔をした。

 アルメニア系住民が多数派だったナゴルノ・カラバフは、ソ連が崩壊した1991年にアゼルバイジャンからの独立を宣言。アゼルバイジャンとの紛争になったがアルメニア側が勝利し、94年の停戦後は、ナゴルノ・カラバフの大部分と周辺地域がアルメニア側の実効支配下に入った。

 だが、豊富な天然資源によって国力を増したアゼルバイジャンは2020年に大攻勢をかけた。一度は停戦で合意したが、今年9月にナゴルノ・カラバフを「対テロ作戦」の名目で攻撃。アルメニア系組織をわずか1日で降伏させ、30年以上続いた紛争はアゼルバイジャンが「勝利」した。

「たくさんの国と戦っていた」

 アラさんを含め、人口の大半…

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