膨大な書類、積み重なる遅れ…自死した「現場監督」を追い込んだもの

有料記事働くってなんですか

編集委員・沢路毅彦
[PR]

 罰則付きの残業時間規制が来年4月から建設業にもかかります。中でも長時間労働が深刻なのが、施工管理を担当する現場監督です。今年5月には、大手ゼネコン清水建設で施工管理をしていた男性の自死が労災に認定されました。その原因を調べた会社の報告書からは、膨大な事務作業に追われる様子が浮かびます。(編集委員・沢路毅彦)

 労災が認められた男性が自死したのは2021年8月だった。長時間労働が原因ではないかと遺族から指摘を受けて、清水は同11月に外部弁護士3人による特別調査委員会を設置して調べた。

 22年3月にまとめた報告書で、パソコンの操作履歴などから直前3カ月の残業時間が平均100時間を超えていたと認定。労働基準監督署も「仕事量に大きな変化があり残業時間が倍以上になった。1カ月あたり100時間以上になった」として、心理的負荷が「強」だったとした。

 調査委員会の報告書は50ページ以上にわたる。そこには、男性の働き方が詳細に書かれている。

 男性は16年に清水に入社。20年に東京都江東区の作業所に配属された。ここでは東京都下水道局が発注した下水処理施設の工事を手がけていた。

 男性の負担が増えたと思われるのは21年5月に鉄筋工事担当になってからだ。男性は鉄筋工事の経験が乏しかった。

 5月時点で作業所に10人いて、うち施工管理を担う「工事係」は5人だった。そのうち2人は派遣社員で、清水の社員は3人。4月に入社したばかりの社員もいて、入社5年目でも男性の社歴が最も長かった。

 所定労働時間は午前7時半か…

この記事は有料記事です。残り1613文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【本日23:59まで!】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

  • commentatorHeader
    小室淑恵
    (株式会社ワーク・ライフバランス社長)
    2023年11月28日8時46分 投稿
    【提案】

    清水建設で、入社5年目の現場監督が過労自死。3か月の平均100時間を超える残業の末に....いったい何人の命が失われたら、この国で本気で命を守る仕組みを作れるのだろうか。私たちは過労死が起きることに慣れてしまっていないだろうか。2019年に

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    永田豊隆
    (朝日新聞記者=貧困、依存症、社会保障)
    2023年11月27日9時22分 投稿
    【視点】

    驚くほどの長時間労働。大勢が働く現場を預かり、精神的負荷も高そうです。 海外パビリオンの建設の遅れが指摘されている関西万博に向けて、来年4月から建設業にも適用される残業時間の上限規制を外そうという議論があります。この自死した社員の経緯を読

    …続きを読む