芽が出る縁起物クワイの出荷始まる 農家増えたが猛暑、出来はいかに

西本秀
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 お正月のおせち料理などに使われるクワイの出荷が7日、全国一の産地である広島県福山市で始まった。生産農家の高齢化や減少が課題だったが、後継者が加わり、平年並みの出荷量が期待されるという。

 午前6時、JA福山市の福山グリーンセンター集荷場(川口町2丁目)で、農家が収穫したクワイの点検作業が始まった。検査員が4キロ詰めの箱をひとつずつ開けて、大きさや色合いなどを確認。7日は計1・6トンが出荷された。

 クワイは丸い塊状の茎から細長い芽が伸びる形から、「芽が出る」縁起物とされてきた。煮物や素揚げにすると、ほくほくとした食感が楽しめる。

 12月20日まで出荷を続け、関東や関西、九州などの市場にも届ける。夏の猛暑の影響は、泥の中から掘り出してみないと分からないものの、全体で130トンの出荷を見込んでいるという。

 福山市では全国のクワイの約58%(2020年統計)を生産している。生産農家でつくる福山くわい出荷組合(渡辺孝信組合長)は現在34人。後継者3人が加わり人数が増えた。

 そのひとりの渡辺慶明さん(40)は、「子どものころ親の作業を手伝ってはいたが、本格的な生産は初めて。自分のクワイが縁起物として食べてもらえるのはうれしい」と話していた。

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 7日のクワイの初出荷に合わせて、クワイを使ったケーキや焼き菓子など「クワイスイーツ」の試作品がお披露目された。

 大きさなどが規格外のクワイの活用を模索していた福山くわい出荷組合に、広島県洋菓子協会の5業者が協力した。クワイを蒸してつぶすなどしたペーストを原料に、モンブランやチョコケーキ、タルトなど5点を仕上げた。

 同協会の副会長で、福山市内でケーキ店を経営する橘高庸泰(のぶやす)さん(53)は「少し苦みのあるクワイの風味にハチミツを加えて、口当たりの良いモンブランができた」と話す。現状ではコストが高くなるのが課題。今後さらに改良を加えて、来年春に市販する計画という。

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この記事を書いた人
西本秀
長崎総局次長|編集デスク
専門・関心分野
戦後社会の変容、台湾政治