集団生活の苦手な子を支えたい 川越市の坪谷千代子さん

聞き手・小林未来
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 発達に特性があり、集団生活が苦手な子どもを支援するため、スタッフが学校や保育園を訪問する――。埼玉県川越市の坪谷千代子さん(50)は昨年、「保育所等訪問支援」を専門に行う会社「ムーヴ・オン」をさいたま市中央区で立ち上げた。こうした訪問支援を専門に行う事業者は珍しく、県主催の昨年の女性向けのビジネスコンテストでも、優秀賞を受賞した。事業にかける思いを聞いた。

 ――どんな事業をしているのですか

 発達に特性がある子は、例えば、片づけが苦手で私物が教室に散乱してしまったり、気持ちの切り替えが苦手で体育館や音楽室への移動がスムーズにいかなかったりすることがあります。また、聴覚が過敏で雑音が多いグループワークに入れない子や、感情の高ぶりが暴力となって表れる子もいます。

 そこでスタッフが学校や園を訪問し、「いまは何をする時間だっけ?」「どうして今イライラしているか考えてみよう」と声をかけたり、「まずは床に落ちているものを拾おう」と促したりしています。そうすることで、本人も担任の先生も周囲の友だちも少し楽になります。

 学校に対し、「グループワークのときは教室外にいったん出ることを認めてあげることはできませんか」などと提案することもあります。

 ――支援の頻度はどのくらいですか

 子ども1人あたり少なくとも月に数回、1回につき1時間~数時間ほど支援に入っています。スタッフは私も含めて7人おり、精神保健福祉士や保健師、元教員、元保育士などです。

 ――支援は学校や園からの依頼によるのでしょうか

 基本的にすべて保護者からの依頼です。保健センターなどから案内されて相談に来る方もいます。「学校で子どもが注意され続けている」「どこに相談したらよいか分からない」と悩んだ末の依頼も多いです。

 依頼を受けると、校長や教頭、担任教諭らに事業の説明をし、どのような支援をするかを打ち合わせてから訪問を開始します。事業自体がまだあまり認知されておらず、理解を得るのに時間がかかったこともありました。

 ――なぜこの事業を始めようと思ったのですか

 以前は障がい者向けの就労支援をしていたのですが、利用者のなかにはうつ病や精神疾患を抱えている人も多くいました。よくよく話を聞いてみると、子どもの頃に受けたいじめやトラウマが大人になってからの生活にも大きく影響している例が多いことが分かりました。その背景には発達障がいがある場合もあり、子ども時代からの支援が重要だと感じました。

 4年ほど前に障がい児向けの施設の管理者になり、サービスの一つとして「保育所等訪問支援」も始めたのですが、困っている方の多さに驚き、これを専門に取り組みたいと思うようになりました。

 ――やってよかったと思うことは

 子どもの成長を感じる瞬間です。集団の遊びに入れなかった子が、ある日突然友だちとのドッジボールに参加するようになったり、友だちと言い合いになっても泣かずに気持ちを切り替えられるようになったりする場面に出合うと、子どもってすごいなと感動します。

 教育と福祉が連携し、孤立する子や保護者、困っている先生の力になりたいです。支援を広く知ってもらい、サービス可能なエリアを広げられたらと考えています。(聞き手・小林未来

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