性暴力と私たちの社会 変わるために必要なのは リロン編集部から

Re:Ron 編集部から

畑山敦子
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 故ジャニー喜多川氏の性加害の告発が相次ぐなか、男性の性被害がテーマの舞台「蘇(よみがえ)る魚たち」が注目を集めた。脚本を手がけた劇作家の石原燃さんに、この問題にどう向き合えばいいかを聞いた(10月16日配信「なぜ気づけなかった…演劇界にもある性加害、石原燃さんの絶望と願い」)。

 石原さんがまず指摘したのは、ジャニー氏個人の問題で終わらせず、「それを支えてきた組織や社会のこと」を考える必要性だ。この事件は「社会全体が性暴力に対して無知だったからこそ、ここまで放置されてきた」以上、「それぞれが自分自身、あるいは自分が属するコミュニティーへの批判もしていかないといけない」。

 その上で石原さんは、自分の身近で起きていた事件を振り返ることから始めた。演劇界で、性暴力被害者の代理人を務めたりハラスメント講習を行ったりしていた弁護士が、俳優の女性に性暴力を行い、3月に提訴されていた。

 石原さんは、なぜ気づけなかったのかと自問しつつ、「気づけないのだということを思い知り、絶望するところから始めないといけない」と語った。社会全体に性暴力を許容する「空気」があり、特に演劇の現場は密室性など加害が起きやすい条件がそろっている以上、性暴力の横行は「当たり前」という現状認識が必要なのだと。

 そして改めて語った。「ジャニーズ事務所だけの問題だと思っている限り、芸能界も、社会も変わらない」。性暴力を許さないのはもちろん、根っこにある「空気」をそのままにしてはいけない。そう考えさせられた。畑山敦子

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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2023年10月29日17時35分 投稿
    【視点】

    ジャニーズ問題をネットで目にし、耳にするなかで、なんだかよくわからない引っ掛かりというかわだかまりがずっとあった。世界でも類をみないほどの大問題だと認識しながらも、どこか「他人事」のように考えてしまう自分に苛立ちを隠せなかった。芸能界に身を

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