「ブチャ 死の通り」元特派員が授業で語るウクライナ

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 「死の通り ブチャ生存者の証言―特派員が語るウクライナ」をテーマにした「出前授業」が20日、兵庫県芦屋市の甲南高校・中学(山内守明校長)であった。8月まで朝日新聞ヨーロッパ総局員だった金成隆一記者(現大阪本社社会部次長)が高校生約120人に、ロシアによる侵攻が続くウクライナでの取材について語った。

 金成記者はロシア軍のウクライナ侵攻前後の2022年1月から9月に計4回、首都キーウや西部リビウなどで取材をしてきた。

 授業は侵攻前夜のキーウで軍事訓練を受ける市民の様子から始まった。ロシア軍に一時占領されたブチャの「死の通り」の動画が流れると、大教室が静まりかえった。路上のあちこちに遺体が横たわる。あらかじめの注意喚起を受け、動画を見ないよう顔を伏せる生徒もいた。

 金成記者は「遺体はフェイクだ、とSNSで主張する人たちがいて、それが拡散された。だから自分の目で確かめなければと考えた。皆さんもSNSで見たものを安易には信じないでほしい。意図的なうそがある。ブチャの件はその典型のひとつだと思う」と語りかけた。

 ロシア兵がいる中で遺体の埋葬を続けた人に墓地で取材をしたこと。「処刑場」と思われる弾痕の残った建物の写真。日本人の志願兵が語った思い。夜中に空襲警報が鳴るたびに何度も避難した経験。質問時間も含め100分間の授業でも、生徒たちは集中力を切らさなかった。

 柿田悠吾さん(17)は「ウクライナで取材した人にしか語れない話だった。『死の通り』は日本にいたら見ることのない光景。ウクライナについて関心は持っていたが、改めて戦争は良くないと思った。勇気がいるが特派員という仕事にも興味を持った」と語った。

 出前授業は、教育での新聞活用に取り組む県NIE推進協議会の事業のひとつ。同校のグローバル・スタディ・プログラムを選択している高1~3年生が参加した。

 金成記者は00年に入社。神戸支局や大阪本社社会部などを経て米ニューヨーク支局、東京経済部、ヨーロッパ総局員などを歴任した。

 ニューヨーク支局員時代の米大統領選に関する一連のルポなどで、優れた報道で国際理解に貢献したジャーナリストを表彰する18年度ボーン・上田記念国際記者賞を受賞している。

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