昭和の時代に朝日新聞などで長期連載され、今も愛される長谷川町子さんの漫画「サザエさん」には、当時の習俗や出来事をほうふつとさせる作品が数多くあります。今回はその中から、1967年に掲載された「オルゴール」に関する漫画を入り口に、オルゴールの歴史を振り返ります。漫画の中でサザエが聞いたであろうオルゴールの音も聞くことができます!
デパートらしき場所でオルゴールを買い求めるサザエ。曲はヨハン・シュトラウス2世の有名なワルツ「美しく青きドナウ」。一人で楽しげに聴き入る様子は、ふだんのサザエからはうかがえない一面だ。この曲のオルゴールにまつわる、すてきな思い出があるのだろうか。
漫画の掲載は67年。日本のオルゴール生産最大手・ニデックインスツルメンツ(旧三協精機製作所)の畠博一さんによれば、日本のオルゴール生産台数は60年代から70年代にかけてスイスを抜き世界一となった。
ゼンマイ動力で回転する円筒(シリンダー)の表面に突き出た多くのピンで、櫛(くし)のように並んだ鋼鉄製の歯(弁)をはじき、音楽を奏でるオルゴールの技術を確立させたのは、18世紀終わりごろのスイスの職人たちだったとされる。当初は時計の時報用だったが、音楽鑑賞用として次第に大型化・複雑化し、19世紀後半から20世紀初めに技術的頂点を迎えた。
東京都のJR三鷹駅近くにあるミタカ・オルゴール館は、吉野勝美館長(81)が収集した約100点のアンティークオルゴールを収蔵・展示している。逸品の一つが1870年ごろにスイスで製造された「ニコルフレール グランフォーマット オーバーチュアボックス」。一般的なオルゴールは弁の数が18~24程度だが、この機種には193もの弁があり、複数の弁を同時に鳴らして音に強弱をつけたり同じ音を連続して出したりできる。記者も試聴したが華やかさと繊細さを兼ね備えた音色に聞きほれてしまった。アンティークオルゴールは京都府向日市の「永守コレクションギャラリー」など各地の施設で聴くことができる。
高級オルゴールは蓄音機の普及で衰退したが、小型のオルゴールは土産物や時計、おもちゃなどに組み込まれて生き延び、大衆化が進んだ。
日本でオルゴール生産が始ま…
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