性別の縛りから抜け出して自信を 男女共同参画アドバイザーの元教員

中塚久美子
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 女性議員の割合を高めたことで全国的に注目される兵庫県小野市。先導してきたのが、現在はフリーの男女共同参画アドバイザー、中村和子さん(68)=同県加東市=だ。その取り組みはいま、近隣市町にも広がっている。

 2010年、小野市は女性リーダー養成講座を始めた。女性市議がゼロの現状に、市長から「どうにかできないか」と言われ、市男女共同参画担当の課長だった中村さんが企画した。

 婦人会役員や旅館の従業員、100円ショップのパートなど多様な分野の女性が集まり、つながった。白井文・尼崎市長(当時)らを講演に呼び、女性の政治参加の意義を学んだ。

 翌年の選挙で女性市議が3人誕生。コミュニケーション力を上げる方法なども講座に取り入れ、次は4人、その次は7人(定数16人)と増えた。

 男女共同参画について学び、企画力を磨き、シンポジウムの開催など、身につけたことを形にする。こうした一連の講座は加西、加東、西脇、三木、養父、宍粟、多可、神河の近隣市町に広がる。

 講座参加者で立候補した人のほとんどは当選した。だが、中村さんはきっぱりと言う。「何人議員になったかに、こだわりはない」

 女性議員を増やそうとする過程で、多様性を欠く意思決定の現状が「見える化」される。そのこと自体は大事だとしつつ、もう一つ手前に焦点を合わせる。「一人ひとりが『物申せる場に行きます』と言えることが重要。自尊感情に支えられてこそできる。女性は『女の子だから』という枠にはめられ、自分から『黙っとこ』となりがち。自分の人生のコントローラーは自分で持つんだよ、ということを伝えたい」

 元々は教師。1977年から20年余り、小野市立小学校の教壇に立った。算数の新しい解き方を児童らと一緒に試し、教え子たちが目を輝かせて考える姿に、「これこそ教育」と心に刻んだ。児童一人一人が友達のいいところを探し、「いいところを見つけられる自分を認める活動」に取り組み、自尊感情の育成に力を入れた。

 男女共同参画社会基本法が施行された99年、県立嬉野台生涯教育センターで指導主事に。翌年、文部科学省委嘱の「0才からのジェンダー教育推進事業」に関わる。

 性別によって「あるべき姿」を大人からすり込まれる子どもたちに、「あなたはあなたのままでいい」と伝えるカルタを、姫路市の保育士グループと作った。

 「あかいふく ぼくも わたしも だーいすき」「いっぱいないても いいんだよ おとこのこだって かなしいもん」

 保育士らが自らの思い込みに気づいたうえでプロジェクトをやり遂げ、自信をつけたことがうれしかった。女性リーダー養成の原点になった。

 小学校長などをへて、18年からフリーに。県内自治体の男女共同参画推進計画策定に関わる。

 事務方が学び合えるようにと、周辺市町に呼びかけて男女共同参画担当者が集まる連絡会も発足した。

 「出会いの中で、みんなが性別による縛りから抜け出して自信をつけていくのを見るのが楽しい」

 一人一人が視点を上げていけるよう、そっと背中に手をあて続ける。

 「人を育てんの、好きやねん」

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