第1回前例ないなら私が作る 人工呼吸器の12歳、起業する夢に向かって

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 首につけた人工呼吸器の管を外すと、シューッと音を立てて空気が抜け、部屋の中に電子音が響いた。

 プププ……ププ……。プププ……ププ……。

 奈良県生駒市立生駒北中学校1年、宮崎響(ひびき)さん(12)は、自宅では主に居間に敷いたマットで横になって過ごしている。自発呼吸もできるが、人工呼吸器なしで過ごせる時間は長くない。警告の電子音は命綱だ。

人工呼吸器や胃ろうが日常的に必要な「医療的ケア児」は全国に約2万人いるとされます。響さんの日常生活に密着し、胸の内と夢を語ってもらいました。

 管を外したのは父の昌明さん(56)。体重25キロの響さんと、重たい人工呼吸器。つないだままでは運べない。母の麻貴子さん(50)が呼吸器を入れたケースを持ち上げ、部屋を出る。「じゃあ行くよ」。昌明さんが身長125センチの小さな体を抱きかかえ、後に続いて玄関を出た。

 車に積んだ車いすに響さんを乗せ、麻貴子さんが呼吸器をセットすると電子音が消えた。

【動画】家から登校する響さん。人工呼吸器を外し、父親に抱えられて車に乗り込む=林敏行撮影

 昌明さんが車を発進させると、窓越しに「がんばってね」と麻貴子さんが手を振り、響さんも「バイバイ」。

 15分後に学校に着いた。駐車場に車をとめ、車体後部のスロープを使って響さんを降ろす。看護師の吉田直子さんが到着したところでバトンタッチ。市が日替わりで派遣する担当看護師は6人おり、この日の当番が吉田さんだった。

 「体調はどうですか?」

 「大丈夫です」と響さん。

【動画】父親が運転する車で学校へ。看護師さんが出迎えてくれる=林敏行撮影

 吉田さんに車いすを押され、校舎横のドアを抜けてエレベーターで3階へ。にぎやかな1年1組の教室に入ると、近くの席の女の子が「おはよう」と手を振った。

 毎朝の登校の風景だ。

記事の後半では、教室での朝の会や学習の様子、響さんが思い描く将来についても動画で紹介しています。

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 響さんは2011年2月に生…

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