日本対がん協会賞に山口県内から2氏 伊東武久さんと松本常男さん

松下秀雄 山野拓郎
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 がんの予防をはじめ、がん征圧のための活動に功績のあった個人や団体に贈られる今年度の日本対がん協会賞に、山口県内から徳山中央病院(周南市)で緩和ケア内科主任部長を務める伊東武久さん(79)と、県予防保健協会副理事長の松本常男さん(71)が選ばれた。8日に山口市である「がん征圧全国大会」で表彰される。

伊東武久・徳山中央病院 緩和ケア内科主任部長

 産婦人科の医師として、婦人科がんの予防や治療に長年、とりくんできた。一方で、近年はがん患者の心身の苦痛を和らげる緩和ケア内科医として、患者やその家族の支援を続けてきた実績が評価された。

 山口大学大学院医学研究科で学び、1977年、徳山中央病院に産婦人科部長として赴任。同大学医学部臨床教授なども兼務しながら、子宮がんなどの手術を数多く手がけてきた。同時に、各地で講演をしたりテレビに出演したりして、子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチン接種の普及・啓発に努めてきた。

 手術をして少し元気が出てきたら、家に戻りたいという患者の希望をかなえ、できる限り往診に行くようにしてきた。自身、死ぬときは自宅で死にたいと考えているし、患者が副作用などで苦しむのは医師である自分の責任という思いもあってのことだ。「本人が治療を選ぶといっても、結局は医師の意思が通る」から、その責任を果たそうと、みずから往診をする。

 2008年、同病院は苦痛を和らげる緩和ケア病棟を開設し、緩和ケア内科を設けた。その後の15年間、伊東さんは3600人以上の入院患者と向き合った。在宅でみとった患者は330人以上にのぼる。

 予防から手術、みとりまで、一貫してとりくんできたのですねと記者が尋ねると、産婦人科医として出産にも立ち会ってきた伊東さんは「『ゆりかごから墓場まで』です」と笑った。

 「生まれてから亡くなるまで、人がどのように生き、死んでいくのか。人生は全部、ストーリーです。その人らしい死に方を支えるのが、緩和医療のいちばんの基本です」松下秀雄

松本常男 県予防保健協会副理事長

 県成人病管理指導協議会肺がん部会の会長などを務め、長年にわたって肺がん検診の普及啓発などに貢献したことが評価された。

 山口大学医学部を卒業後、放射線科の医師として医学部付属病院や徳山中央病院などに勤務。当時は胸部の撮影をすることが多く、肺がんにかかわることになったという。1990年代初頭にはシカゴ大学に留学し、ロボットによる画像診断の研究にあたったこともある。

 約47年にわたって肺がんの検診や診療に携わり、現在も医療の第一線に立つ。多い日で1日1千枚の画像診断をおこなう日もあるという。国立病院機構山口宇部医療センターの名誉院長、非常勤医師として外来を担当し、患者と向き合い続けている。

 後進の育成にも努めてきた。生活習慣病などの検診にあたる担当者に向けた講習会で講師を務め、正しいがんの知識の啓発活動に従事。学会の画像診断セミナーでも指導にあたってきた。

 肺がんについて、「診断技術の向上で非常に早い時期のがんも見つかるようになった。体への負担が小さい手術ができるようになり、早期に社会復帰ができるようにもなった。本当に隔世の感がある」と話し、だからこそ検診を受診することが大切だと指摘する。

 検診の受診率を高める方法については、「ビッグデータなどを活用し、検診を受けるメリットがデメリットを上回るということをより明確に示せれば、向上するのではないか。新型コロナウイルスのワクチン接種ではあれだけ高い接種率を達成できた。肺がん検診の受診率ももっと高めていきたい」と話す。(山野拓郎)

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