元SEALDsメンバー語る 8年前の夏と今「水をかき出し生きる」

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聞き手・伊木緑
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 2015年に安全保障法制への抗議運動を率いた「SEALDs(シールズ)」。中心メンバーだった牛田悦正さん(30)は昨年9月、安倍晋三元首相の国葬への抗議デモで久々に街頭に立った。安保法制反対で国会前に12万人(主催者発表)を集めた8年前の夏、世論を二分した昨年の国葬、そして今。牛田さんが考えるこれからの市民運動は。

     ◇

 ――国葬当日、「5年ぶりくらいに国会前に行った。複雑な気持ちになった。無力を噛(か)み締めて(でも、ひとりではない)、またここからはじめないといけない」とツイートしていました。

 「何年もデモに行っていなかったのは、疲れてしまった、というのが大きいです。デモを続けるのは本当に大変ですから。国葬のデモを訪れたのは、たまたま知人に誘われたから。中心のマイクから遠い位置からそっと見ていました」

 ――「複雑な気持ち」の正体はなんだったのでしょう。

 「個人で参加したとみられる若い人の姿もちらほら見ましたが、昔ながらの各団体ののぼりが立ち並ぶデモで、『なんかちょっとおかしい』と考えて個人の意思で訪れた人が、疎外感を感じる空気だったように思いました」

 「あのデモの中心となっている人たちのことは尊敬しているし、あの人たちがいるからいまの社会がある。でもどうしても内輪向けで、新しく来た人を迎え入れようという感じがしなかった。僕たちがやる前はこういう風景だったんだろうな、僕たちがやってきたことって何だったんだろうな、と思いました」

 「ただ、そういうことを言いたくなるのは、自分がいま何もできていないからだということはよく分かっていて、そんな自分をかっこ悪いなと思っています。それが『複雑な気持ち』の半分です」

安倍氏への「愛憎に似た思い」

 ――もう半分は?

 「安倍さんが亡くなって悲し…

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    小熊英二
    (歴史社会学者)
    2023年8月24日10時38分 投稿
    【視点】

    「SEALDsが担っていたのは1%くらい」とは恐らく正しい認識だ。首相や社長や王様の名で語られる諸現象も、その個人が占める実際の比重はそうしたものだ。 にも拘わらず、「SEALDsが成し遂げたと思われていること」の全ての責任やら期待やら、

    …続きを読む