企業は「倫理」を追求すべきか バフェットさんとの対話から考えた

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アナザーノート 江渕崇・経済部次長

 たった一人のカリスマ投資家の言動が、ここまで一国の市場の風景を変えうるものなのか。あれから4カ月が経とうとする今も、あっけにとられた気分でいる。

 東京・大手町の高級ホテル「フォーシーズンズ」。4月11日午前、控室として用意された部屋で、私は準備した質問を頭の中で繰り返していた。

 「ミスター・バフェットの準備ができました」。ビル群を見下ろすスイートルームに案内されると、トレードマークの朱色のネクタイ、少ししわが寄ったワイシャツ、ゆったりしたサイズのスーツに身を包んだ「投資の神様」が、緊張をほぐすような力強い握手で迎えてくれた。

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 ウォーレン・バフェットさん、92歳。好々爺(こうこうや)然とはしているが、世界最大級の投資会社、米バークシャー・ハサウェイの会長兼最高経営責任者(CEO)として、5千億ドル(約70兆円)超の資産の運用先を最終判断する。

 割安な優良株を見いだし長期投資する基本スタイルを貫く。本拠とする米中西部ネブラスカ州オマハにちなみ、「オマハの賢人」と称される彼の哲学は、世界の投資家が範としてきた。

 まずは場を和らげようと、ニューヨーク駐在時、バークシャーが以前買収した「コート」という会社から家具一式を長期レンタルしていたことを告げ、「私はあなたの富にわずかばかり貢献した一人です」と冗談を言ってみた。

 バフェットさんはしみじみ「うん、コートはいい投資だったね」と返してくれた。

 来日は12年ぶりである。日本メディアがじかに話を聞ける機会はそうそうない。商社への投資などニュースとして「見出しが立つ」話題だけではなく、どうしても聞いてみたいことが大きく三つあった。

 低成長ニッポンのどこに可能性を見いだしたのか。

 巨万の富を得てもなお、投資の最前線に身を置き続ける熱意はどこから来るのか。

 企業に社会や環境への配慮を求める潮流が強まる中、自身がその権化である「株主資本主義」の旗色が悪くなってきたことに、どうあらがうつもりなのか。

 持ち時間は30分。インタビューが始まった。

「日本買い」に透けるドライな計算

 冒頭いきなり、バフェットさ…

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