上関町の中間貯蔵施設「振興の選択肢のひとつ」、中国電が会見

向井光真 垣花昌弘 松下秀雄
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 原子力発電所の新設が計画されてきた山口県上関町に、中国電力が2日、使用済み核燃料中間貯蔵施設建設に向けて調査を進める意向を伝えた。その理由や計画の概要について、大瀬戸聡・常務執行役員ら中国電力幹部はこの日、同町内での記者会見で、次のように説明した。

 本年2月に、上関町の西(哲夫)町長から、上関原子力発電所の建設の見通しが立たない中、町は待ったなしの厳しい財政状況にあり、新たな振興策につながる施策を真剣に考えてほしいとの要請をいただいた。検討した結果、上関町長島の発電所用地に使用済み燃料中間貯蔵施設設置の検討を進めることが選択肢の一つになりうると考え、本日午前、西町長へ回答した。中間貯蔵施設のニーズを有している関西電力との共同開発を前提に、具体的な計画の検討を進めたい。

 西町長は、議会に報告し、議員のみなさまの意見を聞いた上で判断したいということだった。今後、上関町からご理解をいただければ、まずは施設の立地が可能かどうか、調査を進める予定だ。

 中間貯蔵施設は、使用済み燃料を再処理するまでの間、一時的に貯蔵・管理する施設。発電所の使用済み燃料プールで一定期間、冷却した使用済み燃料を金属キャスクと言われる容器に入れ、貯蔵・管理する。熱は下がっているので、水や電気を使わず、外気による自然冷却で熱を除去する。キャスク、建屋の遮蔽(しゃへい)機能により、敷地境界付近の放射線は自然放射線の50分の1程度と想定されている。

 電力各社の中では、建設中、計画中のものとして中部電力四国電力のように原子力発電所構内への乾式貯蔵施設の設置を行う会社や、東京電力日本原子力発電の2社共同で、青森県むつ市に中間貯蔵施設を建設する会社がある。自社の原子力発電所が再稼働、あるいは設置変更許可が出ている西日本の電力会社のうち、具体的方策を有していないのは当社と関西電力の2社のみだ。

 調査の目的は、中間貯蔵施設の立地が可能かどうかを確認するとともに、必要なデータを取得するもの。調査場所は、当社所有地内の東側部分。文献調査や地表地質調査、ボーリング調査などを実施することとしており、期間は半年程度。

 ――関西電力とはいつごろ、どんな話をしたのか

 上関町長から昨年12月、上関原子力発電所の建設の見通しはどうかというご質問をいただき、2月に現時点では具体的な見通しは立たないと返答したところ、新たな地域振興策を考えてほしいということをいただいた。2月以降に当社から関西電力に、共同で調査をしませんかというお声掛けをし、協議を続けてきた。

 当社だけで施設をつくろうとすると、小規模にならざるを得ない。それでもコストは大きく、当社だけでは困難だということで、共同でできる会社を探し、関西電力にニーズがあった。

 ――町にどれぐらいお金が入ると見込んでいるか

 地元にお願いできる工事はお願いしたい。完成後は固定資産税収などの形で貢献できるのではないか。

 ――調査には公金が出るのか

 調査期間中の交付金が年間で最大1・4億円。

 ――調査するのは何地点くらいか

 ボーリング調査を10本程度、やりたい。

 ――原発と並行でおこなっていくのか

 原子力発電所については引き続き当社としても取り組んでいきたい。用地的な制約などは、これから具体的に検討したい。

 ――使用済み核燃料の輸送は船か

 基本的には船は使うことになると思う。

 ――受け入れるものは、関西電力と中国電力のもの以外にも考えているのか

 現時点ではない。当社と関西電力で検討を進める。

 ――原発建設への反対の根強いところに、追加で中間貯蔵施設をつくることをどう感じているか

 町民のみなさまにご理解いただけるように取り組みたい。

     ◇

 上関町で浮上した使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設計画について、山口県や近隣自治体は2日、いずれも慎重な反応を示した。

 村岡嗣政知事は「中国電力から町に調査・検討を進めたいとの回答が行われたことは承知している。現在は、施設の立地可能性調査の実施が町に申し入れられた段階。まずは今後の推移を見守りたい」とのコメントを出した。

 上関原発の建設予定地から30キロ圏内の光市。上関原発の建設計画に「現状では賛成できない」との考えを示してきた市川熙市長は、中間貯蔵施設について「周辺自治体として、今後の動きを注視してまいりたい」とのコメントを出すにとどまった。上関町に隣接する平生町の浅本邦裕町長は取材に対して「上関町民が決める話なので推移を見守る」、田布施町の東浩二町長は「詳しい説明を直接聞いていないので、コメントのしようがない」と述べた。(向井光真、垣花昌弘、松下秀雄

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