出会いで世界が変わった柳田将洋 海洋冒険家と考えた「生きる覚悟」

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 バレーボール日本代表の柳田将洋(31)=東京グレートベアーズ=が、死と隣り合わせの世界を生きる海洋冒険家白石康次郎(56)と対談した。数十億円の資金をどうやって集めるのか。冒険とは、死生観とは、プロとは。様々なテーマで語り合った内容を、2回にわたって紹介する。

 柳田 「25歳でプロに転向して、海外で3シーズンプレーし、Vリーグに帰ってきて3シーズンを終えました」

 白石 「26歳の時、初めて世界一周をしました。自分でヨットを作って、どこにも寄らないで。もう世界を4周したかな。今も現役で、来年はまた、外洋ヨットではトップクラスの世界一周レースがある。アジア人、有色人種は僕だけ」

 柳田 「白石さんの記事を読んで、冒険って道なき道を進む、自分が歩いた後に道ができる、というイメージ」

 白石 「僕が学生の時、GPS(全地球測位システム)はなかった。セキスタント(六分儀)といって、太陽や天体を測って、航海をやるわけ。今みたいにグーグルアースで全部見られない。世界は未開拓で、グリーンランドの真ん中は真っ白。人類は誰も行ったことがなかったから。山も未踏峰があって、海も全部測量できていたわけではなかった。地図には『ここは分かっていない』と書いてあって。夢があったね。まだ発見されていない島があるんじゃないか、とワクワクしました」

 柳田 「すごいですね。本当の冒険ですね」

 白石 「なんでこういう対談を始めたんですか」

 《きっかけは、柳田がコロナ下で手に取った1冊の本だった。「The Third Door(サードドア) 精神的資産のふやし方」(アレックス・バナヤン著、大田黒奉之訳 東洋経済新報社)。米国の大学生が、テレビ番組で得た賞品のヨットを売ったお金を元手に、ビル・ゲイツやスティーブン・スピルバーグら世界の成功者に突撃インタビューを試みる物語だ。

 担当記者は、柳田をその学生に重ね、2021年2月に対談企画を始めた。アスリートから宇宙飛行士まで、15人とリモートやリアルで対談してきた》

 白石 「いろんな人にいろんなことを聞いて、人生ですごくプラスになると思う」

 柳田 「僕の競技の世界は狭い。いろんな人の話を聞くと、世界が変わる、広がる。その後、チームメートと同じ会話をしてみると、こういう見方もできるな、となる。バレーの世界にも直接生きることが多いと思って、続けています。競技だけではなくてビジネス、環境、ファンとのつながり。いろんなことに興味を持つことが大事だなと」

 「学生時代、影響を受けた方に弟子入りされたんですよね?」

 白石 「ヨットはぜいたくで、石原裕次郎加山雄三しか連想できなかった。下々の者はヨットなんて到底できなくて。でも、最初に世界一周をした、多田雄幸さんという方がいて。タクシー運転手で、お金をためて、ヨットを作って、外国のレースで優勝した物語を本で読んで。当時は、インターネットもない。この人に会いたいと思って、東京駅に行って、電話帳を開いて。多田さんの自宅の電話番号を見つけて、電話をかけて、会ってください、と。『サードドア』の本と一緒。直接アパートに行って、弟子にしてくださいって。今から考えると、夢物語。フランスの船が来た時は、横浜に行って乗せてくれと言って、乗り込んで、大西洋横断の世界記録を作った。サードドアのリアル版をやりました」

 柳田 「今の方が情報が流通…

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