「男が狩り」「女は採集」は誤解? 9千年前のペルーに女性ハンター
男性が野生動物を狩り、出産や子育てのある女性は木の実などを集める――。人類学や民族学で有力視されてきた狩猟採集社会の男女の分業について、こうした定説の見直しを迫る発見や分析が相次いでいる。女性も狩りに参加し、食料となる獲物の調達に重要な役割を果たしてきたとする報告が増えている。
米カリフォルニア大の研究チームは2020年、ペルーのアンデス高地の約9千年前の遺跡で、ハンターと見られる女性の遺体が見つかったと発表した。女性は10代後半で、先端を鋭くとがらせた石器や獲物を解体するナイフなど当時の大型動物用の狩猟具一式とともに埋葬されていた。アルパカの仲間のビクーニャなどを獲物にしていたとみられるという。
発見を受けて、チームはアメリカ大陸の近い時代の遺跡から見つかった400人以上の記録を改めて分析。狩猟具とともに埋葬された27人のうち、4割にあたる11人が女性だったことを突き止めた。論文は米科学誌「サイエンス・アドバンシズ」(https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abd0310)に掲載された。
チームのランディー・ハース博士は「女性が狩猟具とともに埋葬されていたという考古学的な発見は、男女の分業に関する従来の世界観にそぐわずに見過ごされてきた。今回の発見は、ハンターとしての女性を再認識させるものだ」などと話している。
狩猟採集社会における男女の分業については、1960年代にカナダや米国の人類学者らが出版した論文集「Man the Hunter(狩猟者である男性)」などをきっかけに支持されるようになった。各地に残る現代の狩猟採集社会の研究も進み、この主張に沿った男女の分業を示す報告が増えた。一方、狩りをする女性は例外的な存在と考えられてきた。
これに対し、米シアトルパシ…