「ジャズ流し日米仲良くなるのはどうか」 被爆直前の中学校、漫画に

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 78年前の広島への原爆投下では、その年の末までに約14万人が亡くなったとされる。

 「その一人ひとりに人生があった。彼らを知って、覚えてもらいたい」。そう願って漫画を描く会社員がいる。広島県に住む、さすらいのカナブンさん。

 この夏、369人の生徒・教職員が亡くなった旧制県立広島第一中学校(現・県立国泰寺高)の漫画制作を進めている。

 作品に登場する1人が、1年生の山本真澄さん(当時13)。

 建物を取り壊して空襲時の延焼を防ぐ「建物疎開」作業に動員され、被爆した。

 被爆の2時間後、家に戻った姿を父の康夫さんは手記に残した。

 「全身の皮膚はむけてしまって、赤い裸体がそこに立っているではないか」(秋田正之編「星は見ている」)

 自宅に寝かせていると、夜の11時ごろ、真澄さんが聞いた。

 お浄土に、ようかんはあるの?

 3年生だった男性も取材した。「軍艦同士でドンパチやるんじゃなくて、ジャズを流して日米両国の兵士が仲良くなるのはどうか」と話した教師がいたという。この男性の証言も「『戦争万歳』でない人もいたと知ってほしい」と考えて漫画に描いた。

 カナブンさんはインターネット上の漫画投稿サイトなどに作品を発表。「被爆者の手記を読むと、初めて知ることや新たな見方と出会う。他の人にも伝えたい」と訴える。長富由希子

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    辻田真佐憲
    (評論家・近現代史研究者)
    2023年8月5日10時27分 投稿
    【解説】

    ジャズは当時、アメリカ文化の象徴として「敵性音楽」とみなされ、音楽雑誌で「邪図」と当て字されることもあったぐらいですから、その肯定的な利用はかなり思い切った発言ですね。ちなみにジャズ的な音楽も、慰安のための音楽(厚生音楽)としての利用価値は

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