第1回最長トンネル脱出ゴルファー 「五月病かな」続いた私との向き合い方

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 女子プロゴルファーの金田久美子(33)は昨年10月、2度目のツアー優勝を果たした。

 「諦めずに頑張ってきたけど、きつい時期もあった。この日を目標に頑張ってきました」

 何度も声を詰まらせた。

 実に、11年189日ぶりの優勝。国内女子ツアー史上、最長のブランクを乗り越えてたどり着いた頂点だった。

 かつて「天才少女」と呼ばれた。

 生後6カ月でおもちゃのクラブを握り、4歳でコースへ。1998年夏、小学3年生で世界ジュニア選手権を制した。中学1年だった2002年には、12歳9カ月の史上最年少で国内女子ツアーの予選を通過した。

 「キンクミ」の愛称でファンに親しまれた。

 両親に導かれて始めたゴルフは「もともと、好きじゃないと思いながらやっていた」。そんな意識も、プロになって変わった。

 ツアー通算50勝を誇る大先輩の不動裕理から「会社員は1日に8時間も働く。プロも」と言われた。

 「確かに、そうだなって。練習したくない日もあるけれど、応援してくれる人たちがいる。練習しなくっちゃ」

 プロ3年目の11年、21歳でツアー初優勝を果たした。

 脚光を浴びたのは、プレーだけではなかった。

 派手なメイクに茶色く染めた髪、ピアスにネイル……。当時の女子ゴルフ界では珍しかった、きらびやかなファッション。「ギャル+ゴルファー」で「ギャルファー」とも呼ばれた。

 ただ、高まる注目度と相反するように、低迷期が訪れる。

 プロにとって大切なのは、磨いた実力を継続させることだ。1度目の優勝より2度目に優勝することの方が難しいと、ゴルフ界では言われている。

 その「2度目」に、どうしても届かない。

 課題だったスイングの不安定さに、初優勝してからも苦しんでいた。腰痛に苦しみ、また乱れる。スイングが良くなったかと思うと、今度はパットが崩れた。元々、「悩みやすいタイプ」というのが周囲の評。一つのほころびが様々なひずみを生んでいく。

 ゴルフ場に着くと、つらくて涙が止まらなくなった。

 クラブハウスのトイレで嘔吐…

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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2023年7月1日8時0分 投稿
    【視点】

    国内女子プロゴルフ史上最長トンネルを脱出した金田久美子さんの独白です。スランプに陥った時の苦悩を飾らず率直に語っていただいた金田さんに、改めて感謝を申し上げます。その独白から伝わってくるのは、あきらめず、もがき続けることの尊さなんだって思い

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