手の内を明かすと、相手を利することになる――政府が交渉中の外交案件の説明を拒む際によく聞く理屈だ。だが、とっくに相手国が熟知している日本の方針転換を国民や国会には秘密にするというのは、筋が通らない。安倍晋三元首相が進めたロシアとの領土交渉のことだ。
先日刊行された『安倍晋三回顧録』で、安倍氏は北方四島返還要求から2島返還路線に転じた事実を明かしている。だが政府は、歴史的な方針転換を、国民に一切説明していない。
安倍氏によると、従来の路線…
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