甲子園より大切な「人生のスコアボード」 興南の監督が伝えたいこと

有料記事高校野球メソッド

構成・木村健一
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 スポーツの指導者による暴力や暴言が、後を絶たない。2010年に甲子園春夏連覇に導いた興南(沖縄)の我喜屋優監督は「殴り聞かせるという言葉はない。言い聞かせることが大切です」と語る。

 人を殴ることは犯罪です。監督が子どもを殴ったら、暴力をふるう大人になってしまいます。

 何度言っても部のルールを破ったり、態度が悪かったりすると、手を出したくなることがあります。

 そんな時は両手を後ろでぎゅっと結んだ気持ちで冷静に対応します。感情で怒るのではなく、理由を説明して叱ります。

 トラブルを起こした選手を浜辺へ連れ出し、「海は大きな気持ちで魚を包み込んでいる。心の広い人間になりなさい」と諭しました。思い悩んでいる選手と釣りへ行き、心を落ち着かせ、話を聞いたこともあります。

 興南の監督に就任した2007年、野球部の寮ではゴキブリが運動会をしていました。選手の生活も荒れ、食事を残したり、夜更かししたり。

 そこで、「環境」「節約」「学力向上」「情報」「時間」の五つの委員会をつくり、目標を設定しました。子どもに責任や役割を与えると変身します。光熱費の節約分は、ご褒美のアイスクリームに。成果主義も必要です。

 野球は九回で終わるけれど、人生のスコアボードはずっと続きます。

 選手には「試合に出られなかった人の方が出世しているよ」と言ってきました。下積みを積めば、必ず活躍できる時が来る。地元の銀行の方から卒業生の活躍を聞き、感謝された時は、本当にうれしかった。

 甲子園に出られなくてもいいんです。立派な社会人になって、幸せになること、人生で勝つことが大切です。

三塁コーチから海外へ

 興南が春夏連覇した2010年、三塁コーチだった国吉大将さんは大学卒業後、「世界を見たい」と英国の大学院へ留学。修了後、国際協力機構(JICA)で、発展途上国の課題解決に取り組み、今春から外資系の医療機器メーカーに転職し、マーケティングの仕事をしている。

 我喜屋監督の話で最も印象に残っているのは、「逆境を味方にしろ」という言葉です。

 興南の環境は、全国の強豪校…

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