生活保護申請を妨げる「壁」になっていると言われる扶養照会の「照会率」を全国の主要自治体で調べたところ、2021年度は自治体によって5・5%~78%と大きな差があった。照会をするかどうかは自治体の裁量が大きいが、なぜこんなにバラバラなのか。
扶養照会は、生活保護を申請した人や、利用が決まった人の3親等以内の親族に、仕送りなどの援助ができるかを問い合わせる仕組みで、親や子、きょうだいなどに照会する自治体が多い。生活が苦しくても「親族に知られたくない」と保護の申請をためらうことにつながりかねないとして、生活困窮者の支援団体などからは批判が強い。
厚生労働省は、親族が高齢者や、長期間連絡をとっていないなど「扶養が期待できない」親族を例示し、その場合は照会しなくてもよいとしている。さらに21年2~3月には、関係が悪いとみなす「音信不通」の期間を「20年」から「10年程度」とすることや、保護を受ける人が照会を拒んでいる場合は特に丁寧に聞き取ることなどを求める文書を自治体向けに出していた。
同意得られなければ照会を「保留」
朝日新聞は、全国の県庁所在市、政令指定市と東京23区の計74市区を対象に扶養照会の実態を調べた。厚労省の文書の後、2021年度に保護の開始が決まった世帯に関して、照会の対象となる「扶養義務者」としてリストアップした親族の人数と、実際に照会をした人数のデータから「照会率」を算出した。算出できたのは59市区で平均は41・9%。ほかの市区はデータがそろわなかった。
最も照会率が低かったのは中野区の5・5%で、リストアップした親族2009人のうち、照会したのは110人。次いで、水戸市の12・4%、足立区の17・6%が低かった。
この3市区は、国が示す「扶養が期待できない親族」に該当しない場合でも、申請者が照会を拒んだ場合は、いったん照会を「保留」する取り扱いを導入していた。
中野区は18年、申請者への聞き取りや扶養照会を一手に引き受ける「新規係」をつくった。申請者の同意を得てから照会するようにしたのもこのころだという。「本人が望まないのなら、無理に照会しない。広くやろうとするときりがないし反発もある」と話す。
水戸市も「同意を得ないでトラブルになるのは避けたいし、扶養照会はケースワーカーにとってかなり負担になっている事実もある」。過去には、本人が同意して送ったにもかかわらず、照会を理由に親族との関係が悪くなった人がいたため、同意があっても市の判断で保留するケースもあるという。
足立区の担当者も「無理に照会をしても受給者との関係を悪くするだけ」と話す。
「扶養が期待できない」場合の対応は
逆に、照会率が最も高かったのは佐賀市の78・0%で、親族945人のうち737人に照会していた。2番目は品川区の73・0%、次いで宇都宮市の69・6%だった。
佐賀市の担当者によると、従…
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