シルバー民主主義は本当? 実験で見えた高齢者の意外な投票行動

原田朱美
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 高齢者は、若い世代に投票したがる傾向がある――。早稲田大学の尾野嘉邦教授(政治学)の研究で、そんな結果が浮かびあがった。選挙のたびに、人口が多く、投票率の高い高齢者を優遇する「シルバー民主主義」が話題になるが、実態は必ずしもイメージ通りではないようだ。尾野教授は「若者対高齢者という対立構図でとらえていては、問題の解決にはならない」と指摘する。

 尾野教授は、全国の有権者の中から募集した約3千人の被験者を対象に実験を実施。架空の市長選挙で「無所属新顔の2人があらそっている」という設定で、どちらに投票するかを答えてもらった。

 候補者も架空の2人。ただし、それぞれ若年、中年、高齢に見えるように顔写真を加工した。つまり1人3種類の顔写真を、2セット準備した。それをランダムに組み合わせて被験者に見せた。

 すると、若年と中年の被験者は、自分と同世代の候補者に投票したがったが、高齢の被験者だけが、自分と同世代ではなく、若い候補者に投票したがる傾向があった。

 ではなぜ、実際の政治家には、高齢者がこんなにも多いのだろう。

 尾野教授は「若い候補者が、そもそも少ない」と指摘する。実験を共同で実施したイエール大学の博士研究員チャールズ・マックレーン氏の調査では、2004~2019年に日本で行われた市長選挙で、50歳未満の候補者は1割強しかいなかった。市区町村議会議員選挙でも2割弱だった。

 シルバー民主主義の議論では、「高齢者が求める政策が通りやすく、若い人の意見が通らない」など、世代間の対立があるように語られることがある。

 尾野教授は言う。「若い声が政治の世界に届きにくい問題を解決するには、若い人が立候補しやすい環境をつくるほうが大事なのでは。若い候補者を応援したいと思う人は、高齢者にもいるのだから」(原田朱美)

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