過去の勝利に酔っていた米政権 イラクの教訓はウクライナで生きるか

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日曜に想う 国末憲人論説委員

 エッフェル塔に近いパリのカフェに入ると、奥の席で1人の紳士が手を上げた。日本語で声をかけてくる。

 「お久しぶり」

 フランスの元駐日大使モーリス・グルドモンターニュ氏(69)である。イラク戦争が起きた2003年に国際会議で会話を交わして以来、20年ぶりの再会だ。

 柔和な表情は変わらないが、白髪がかなり増えたように見える。こちらも頭がすっかり薄くなったのだが。

 外交官として駐英、駐独、駐中国大使や外務事務次官を歴任した彼の名は、イラク戦争時に故シラク大統領の外交顧問を務めたことで知られる。大量破壊兵器開発疑惑を口実にイラク攻撃に走ろうとした米英に対し、国連安保理で立ちはだかったのがフランスだった。グルドモンターニュ氏は、当時のドビルパン外相とともにシラク氏の外交戦略を支えた。

 「フセイン政権のイラクは確かに、暴力的な独裁国家でした。でもそれが、イラン・イラク戦争の末にたどり着いた地域の均衡を崩す理由となるのか。私たちが疑問を抱いたのはそこでした」

 米ブッシュ政権側の交渉相手は、コンドリーザ・ライス国家安全保障担当大統領補佐官(68)だった。初のアフリカ系女性として就任し、ブッシュ大統領一家との親しい関係で知られた。

 「素晴らしい才能を持つ人で、重要な時期に要職を担ったのは確かですが」

 グルドモンターニュ氏は、昨年フランスで出版した回想録でライス氏とのやりとりを明かしている。戦争が起き、フセイン政権を米英が崩壊させた後、フランスはイラク復興への協力を申し出た。彼女は冷たく言い放つ。

 「あなた方の協力は必要ない…

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