第2回「たかがゴルフなんです」渋野日向子ら1千人を教えたコーチの指導法
渋野日向子(24)が成長した陰に、あるコーチの存在がある。
アマチュア時代から4年間指導し、今シーズンから再び一緒に歩む青木翔さん(40)。
2019年夏、ゴルフの全英女子オープン。笑顔の絶えない渋野の横に、キャディーを務めた青木さんがいた。
前のめりなほど果敢にピンを狙い続ける渋野を、決して止めなかった。日本勢として42年ぶりのメジャー制覇に一役買った。
モットーがある。
「正解は教えない。スイングも、ほぼ教えない」
渋野がプロテストに落ちた17年、頼まれてコーチに就いた。最初に伝えたことは、たった一つ。
「クラブのヘッドはボールにこうやって当たるんだよ」。スイングの軌道や球が飛んでいく仕組みだ。「1+1=2」のような、基本的なクラブや体の使い方しか教えなかった。
実質的にプロ1年目となった19年も、大きな修正はしなかった。
すると、ある大会の優勝争いで敗れた渋野が「5メートルのパットを入れられるようにしたい」と懇願してきた。
どこかおとなしい印象があった渋野に対し、ひそかに青木さんが求めていた姿だった。
「言われたことは、すぐに忘…