第2回「たかがゴルフなんです」渋野日向子ら1千人を教えたコーチの指導法

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 渋野日向子(24)が成長した陰に、あるコーチの存在がある。

 アマチュア時代から4年間指導し、今シーズンから再び一緒に歩む青木翔さん(40)。

 2019年夏、ゴルフの全英女子オープン。笑顔の絶えない渋野の横に、キャディーを務めた青木さんがいた。

 前のめりなほど果敢にピンを狙い続ける渋野を、決して止めなかった。日本勢として42年ぶりのメジャー制覇に一役買った。

 モットーがある。

 「正解は教えない。スイングも、ほぼ教えない」

 渋野がプロテストに落ちた17年、頼まれてコーチに就いた。最初に伝えたことは、たった一つ。

 「クラブのヘッドはボールにこうやって当たるんだよ」。スイングの軌道や球が飛んでいく仕組みだ。「1+1=2」のような、基本的なクラブや体の使い方しか教えなかった。

 実質的にプロ1年目となった19年も、大きな修正はしなかった。

 すると、ある大会の優勝争いで敗れた渋野が「5メートルのパットを入れられるようにしたい」と懇願してきた。

 どこかおとなしい印象があった渋野に対し、ひそかに青木さんが求めていた姿だった。

 「言われたことは、すぐに忘…

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    後藤太輔
    (朝日新聞スポーツ部次長=子ども、社会)
    2023年5月1日14時0分 投稿
    【視点】

     私はスポーツは真剣に勝ち負けを競い合うものだと思っています。それがゲームの一部であり楽しみだからです。(ただ、真剣に勝利を追求するのは、試合開始から終了後まで、ルールや倫理に則ってやる範囲において、です)  人生においては「たかがスポーツ

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    中小路徹
    (朝日新聞編集委員=スポーツと社会)
    2023年5月1日14時42分 投稿
    【視点】

    何と説得力のある指導論(=教育論)だろう、と感じ入りながら、読みました。  「失敗して経験した方が残る。自分で考えて、気づくことが大事」  青木さん自身が、教え子たちの結果につながる指導ができない日々を経験してきた中で、気づかせ、考えさ

    …続きを読む