「戦後の精神」に見た希望 激烈に熱心に、書き続けた大江健三郎さん

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吉村千彰

 3日に亡くなった大江健三郎さんは、自他共に認める「戦後の精神」を体現した作家だった。原発政策や安保政策の大転換、ウクライナ侵攻について、大江さんだったらどう見ただろう。考えを聞きたいが、それはもうかなわない。

 2013年にインタビューした際、東日本大震災東京電力福島第一原発の事故について自分を責めていた。「(自身は)積極的に社会に関われる作家という幻影を抱いていた。だが、受け身な老人として生きている。原発に対して鈍感で中途半端だった。とがめられるべきだ」と。

 しかし、振り返れば、自身も小説の主人公たちも「小説を書く習慣に鍛えられた力で、人生の困難を乗り越えてきた」。

 原発事故の直後、書いていた…

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    市田隆
    (朝日新聞記者=調査報道、経済犯罪)
    2023年3月14日17時4分 投稿
    【視点】

    大江健三郎さんの作品では、物語の豊かな世界が広がる小説だけではなく、私が高校生だった1980年ごろに刊行され、読み続けた『大江健三郎同時代論集』(全10巻、岩波書店)が今でも印象深い。 同時代論集に収められた多数の評論、講演の一部を思い返

    …続きを読む