自撮りにフェイクニュース ウクライナとロシア、SNS時代の情報戦
ツイッターなどのSNS(交流サイト)が、ロシアによるウクライナ侵攻で大きな役割を果たしている。
最も効果的だった例の一つが、昨年2月24日にロシアが侵攻した開戦直後のものだ。
2月25日夜、ウクライナのゼレンスキー大統領はキーウ(キエフ)の大統領府前の通りで自撮りし、SNSに投稿した。
「首相も、大統領もここにいる。我々はここで国を守っています」
ゼレンスキー氏が亡命政権樹立のため出国したといううわさを打ち消し、国民に徹底抗戦を呼びかけた。
侵攻後は、キーウの近郊ブチャでの虐殺を始め、市民がロシア軍の蛮行を記録した。
その動画や画像はスマホ画面を通してほぼリアルタイムで世界に拡散され、欧米を中心としたウクライナ支援の世論を動かす原動力となっている。
侵攻の兆しは開戦前からツイッターやTikTokなどでも広がり、ウクライナ国境付近にロシアのものとみられる軍用車両や軍隊が集結していく動画や写真が投稿されていた。
拡散力の強さゆえ、ロシア側はフェイクニュースの発信にも利用した。ゼレンスキー氏は電撃訪問の様子をSNSに投稿するなど、国民の戦意高揚に活用している。
広報やプロパガンダの歴史に詳しい国枝智樹・上智大准教授は、ウクライナ侵攻でのSNS利用について「政治家やジャーナリストだけでなく市民からも数多く発信されており、多くは英語でも投稿されていることが特徴だ」と指摘する。