山口・岩国の錦帯橋の「橋守」、350年の歴史をつなぐ

川本裕司
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 今年で創建350年となる岩国市錦帯橋で、1月末から敷板の修繕が進められている。2001~03年度にあった五橋すべての架け替えから19年が経ち、傷みが増す木の橋の修繕は、昨年から観光客が少ないこの時期に実施されるようになった。一方、木製の錦帯橋の「世界文化遺産」登録をめざす市は、資料館の建設を計画している。

 市による今年の修繕が始まったのは1月30日。担当するのは錦帯橋を毎月点検する「橋守(はしもり)」の沖川公彦さん(49)ら大工2人だ。

 横山地区寄りの第5橋で、敷板の間の傷んだ木材を削り、すき間の寸法に合わせたヒノキを埋め込んでいく。ハイヒールがすき間にはまり転倒するといったトラブルを防ぐためだ。敷板の間に詰めた樹脂の補充もする。

 事故対策だけでなく、手すり部分の高欄の土台で見つかった腐食など、ほかの傷みの手当ても行う。市内で工務店を営む沖川さんは「安全が第一。年月の経過で橋は傷むので、木の変化に注意を払う」と話す。

 岩国市川西地区出身で、錦帯橋はずっと身近にあった。高校卒業後、運送会社を経て、20歳から建設会社で大工の世界に入り、今は工務店を経営している。

 01~03年度の「平成の架け替え」に参加し、18年度から橋守となって毎月1回、約3時間をかけ橋の損傷や劣化をチェックしている。

 「架け替えで錦帯橋のすごさを実感した。岩国の職人が守ってきた350年の歴史をつないでいきたい。錦帯橋に興味をもつ大工を増やし後継者を育てなくては」と使命を感じている。

 沖川さんの橋守を2年前から手伝っているのが、市内の大工、三分一(さんぶいち)太作さん(43)。沖川さんは橋の修繕でも、歴史に関心が深い三分一さんに声をかけ、一緒に作業している。三分一さんは「歴史的建造物に関わるので気を使うが、やりがいがある」。第1橋、第4橋も修繕し、2月中に終了の見込みだ。

 市は錦帯橋の南東約300メートルの岩国1丁目に、歴史や文化を伝える錦帯橋資料館(仮称)を整備する基本計画をまとめ、1月16日から2月14日までパブリックコメントを募っている。

 資料館では映像やバーチャルリアリティー(VR)で錦帯橋を紹介したり、5分の1の錦帯橋の模型の組み立てを体験できるようにしたりして、観光客が訪れるにぎわいの拠点をめざす。資料館整備の基本計画は17年度にも立てられたが、周辺市道の廃止などの構想に合意が得られず、いったん頓挫した経緯がある。

 資料館は1600平方メートルの敷地に2階建て(延べ床面積1200平方メートル)を予定。23年度に基本設計、25~26年度に建設、27年度の開館を計画している。周辺の広場整備を含め、総工費は約11億1千万円と見込んでいる。(川本裕司)

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