18歳から全て覚え直した 草木染作家・坪倉さんの「光るつぶつぶ」

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山本奈朱香
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 坪倉優介さん(52)は大阪芸術大学に入ったばかりの18歳のとき、交通事故に遭った。10日後に意識を取りもどすと、記憶を失っていた。自分や家族だけでなく、言葉も生活習慣も分からない。

 自宅に連れ帰られ、ひとつひとつ、覚え直していった。光るつぶつぶが「ごはん」。ごはんを食べるのは1日3回、というように。

 大学にも通うようになった。字が読めないから、電車は色で見分けた。でも、たまに同じ色の区間急行に乗ってしまう。「ぼ…くは、きおくがなくて……」とたどたどしく尋ねると、多くの人が途中で去っていった。誰もができることが僕にはできない――。

つぼくら・ゆうすけ

 1970年、大阪府生まれ。大阪芸術大学卒。染師・奥田祐斎さんに師事した後、大阪で「ゆうすけ工房」を開く。著書「記憶喪失になったぼくが見た世界」(朝日文庫)が昨年ミュージカル化された。

 どうすればいいか分からないから、いつも誰かのまねをした。だが、芸大の作品は自分で作るしかない。速いペースでどんどんおもしろいものを生み出す人もいるのに、自分は怒られ、再提出を求められてばかり。落ち込んだ。

芸術に答えはないんだ

 あるとき、黒と赤のロープを使った立体作品を作ったものの、みんなの作品を見て「的外れのものを作ってしまった」と不安になった。

 提出するのやめようかな………

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