松陰の兄、杉民治 山口県の区長就任から150年、地元で研究に熱

川本裕司
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 幕末の思想家、吉田松陰の兄である杉民治(みんじ)が山口県岩国市北部など山代地区の区長に就任し、今年で150年になる。県の行政機関があった同市本郷町などには、地元に功績があった杉を研究する郷土史家がいる。在野の歴史家が毎月集う市内の研究会が半世紀以上続いており、杉を始めとした地域に関わりの深い人物についての論考を後押ししている。

 杉は1828年に生まれ、松陰より2歳年上。萩の松下村塾明治維新で活躍した後進を育てるとともに尊皇攘夷(じょうい)の思想を唱え、安政の大獄で死罪になった松陰を物心両面で支えた。50年に長州藩の郡奉行所の役人となった杉は安政の大獄のあった59年に謹慎となったが、翌60年には解除され、廃藩置県が行われた71(明治4)年の翌年に山代地区に赴任したといわれる。73年6月に同地区の区長、74年に第三大区(岩国市北部や周南市東部)の区長に就任し、76年まで務めた。

 杉は、高低差が大きく水利が悪い山代で農業用水路を数多く整備した。その一つで新田開拓に寄与した大迫水路の用水を利用して、1983年には県が水力の本郷川発電所を設け、今も約300世帯の電力をまかなっている。

 杉の足跡を研究し、2019年に「吉田松陰と山代」という約80ページの書物にまとめたのが、岩国市美和町生見の元市職員友定英章さん(66)。本郷支所に勤めた14年に調査を始め、用水路などの現地を訪れた。「文献から松陰との仲の良さを知った」と言う。

 松陰の妹が主人公のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」が15年に放送され、本郷町では番組に登場する杉への関心が高まった。

 本郷町本谷に住む元市議の池田良幸さん(87)は杉民治翁山代顕彰会を発足させ、研究を重ねてきた。15年には杉の碑を町内に設け、案内の看板も作った。「善政をした杉の功績を地元に長く伝えたかった」と言う。

 友定さんと池田さんがよく顔を合わせるのは、岩国徴古館が主催する「郷土史研究会」だ。1967年度から始まり、岩国の歴史をテーマにした発表が毎月実施されてきた。友定さんは杉について研究会で発表し、書物の作成につなげた。池田さんも研究会の常連だ。松岡智訓(とものり)・徴古館副館長は「研究会で地域の歴史への関心がさらに深まれば」と話している。(川本裕司)

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