90歳監督が描く女性解放運動家 刈谷と半田で映画上映会

山本奈朱香
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 幸福も不幸も男性から与えられるもので、それを受け入れるのが女性の道――。そんな考えが当たり前だった江戸から大正時代に生き、酒乱の夫に離縁状を突きつけ、晩年まで女性解放運動に力を尽くした矢嶋楫子(かじこ)。その生き方を描いた映画の上映会が21、22の両日、愛知県内で開かれる。

 矢嶋は1833(天保4)年に熊本で生まれた。25歳で武家出身の男性に嫁いだが、酒乱の夫に暴力を振るわれ、疲労と衰弱で半盲に。離縁後、兄の看病のため40歳で上京。教員となった後、1890年に創立された女子学院(東京都千代田区)の初代院長に就いた。一夫一婦制や婦人参政権運動などに尽力し、89歳の時には軍縮会議出席のために3度目の渡米をした。1925(大正14)年に亡くなった。

 三浦綾子の「われ弱ければ 矢嶋楫子伝」を読んだ山田火砂子(ひさこ)さんが、「こんな人が江戸時代にいたのか」と感銘を受けて同名の映画にした。「日本最高齢の女性映画監督」ともいわれる山田さんは今月で91歳になる。主演は常盤貴子さんで、竹下景子さんや渡辺いっけいさんら愛知ゆかりの俳優も出演する。

 山田さんは、13歳で敗戦を迎えた。これまでに日本初の女性医師や、小林多喜二の母を主人公にした映画を撮ってきたが、いつも根底には「女性が男性に依存せずにきちんと主張し、戦争に反対すれば、戦争はできないはずだ」との思いがあるという。

 矢嶋が教員伝習所を卒業して教員となったのは41歳の時。山田さんは「日本ではいまだに女性の地位が低く、政治家の女性蔑視発言もある。子育てが終わってから大学に行き直してやろう、というような女性がぞくぞく出てきたら、日本も変わるのでは」と話す。

 竹下さんは公開にあわせ、「楫子の物語は、多様性やジェンダーについての意識が問われている現代にも通じるものです」との言葉を寄せた。

 全国で上映会を開いており、半田市が110カ所目となる。山田さんはすべての上映会に足を運び、舞台あいさつをしている。次回作は、障害のある親を持つ子どもが主人公の「わたしの母さん」の準備を進めている。「好きな道だから、死ぬまでがんばろうと思っています」

 上映会は、21日午前10時半から刈谷市産業振興センター小ホール、22日午後2時から半田市アイプラザ半田講堂。21日は「母―小林多喜二の母の物語」(午後2時)、22日は「一粒の麦 荻野吟子の生涯」(午前10時半)の上映も。上映前に山田さんがあいさつする予定。前売り券は前日まで販売。問い合わせは現代ぷろだくしょん(03・5332・3991)へ。(山本奈朱香)

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