山口・錦帯橋は「海外の技術が融合」 研究家が調査成果を本に

川本裕司
[PR]

 今年、創建から350年を迎える錦帯橋山口県岩国市)は海外の橋の技術が融合されてできた、という独自の見解を打ち出した本が刊行された。著者は元岩国徴古館長の歴史研究家、宮田伊津美(いづみ)さん(76)。徴古館で発見した資料をヒントに海外での現地調査を重ね、ヒマラヤ地方と中国の橋梁(きょうりょう)技術が合体して誕生したのでは、という結論に達したという。

 出版社ロゼッタストーン(周南市)から出版された本は「錦帯橋――ヒマラヤ山麓(さんろく)で発生した技術が岩国で奇跡の結実」。江戸時代初期の1673年の創建からの節目を前に、昨年11月に刊行された。

 著作のきっかけとなったのは宮田さんが2015年ごろに目にした、江戸時代末期に書かれた錦帯橋周辺の土手改修についての記録だった。水をはねさせて水流を変える水辺の石垣の配置に触れられ、図にあった「三番土台当ル」という記述から橋の土台に関連していると考え、橋の構造への考察を深めた。

 錦帯橋は、創建を指示した岩国領主の吉川広嘉が参勤交代で見た甲斐(かい)の猿橋にヒントを得たとも言われる。猿橋は桁材を両岸から突き出していく「ひじき橋」の構造で、その技術の源流はチベットやインドにあるとの説があった。宮田さんは解明のため、海外の現地を訪ねた。

 橋については以前から関心があり、04年以降に訪れた中国のほか、ブータンミャンマー、ラオスなどのそれぞれの橋の構造を比較。中国山東省にあるアーチ型の虹橋(こうきょう)と錦帯橋の類似点に注目し、宮田さんは「紀元前にヒマラヤ地方で発明されたといわれるひじき橋と中国の虹橋の技術が融合したのが錦帯橋」と結論づけた。

 「錦帯橋」は271ページ、3500円(税抜き)。岩国市内の書店などで販売されている。(川本裕司)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら