第1回「ごめんね、はやめて」の一筆、母を救った 息子はありのまま生きる

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 息子からの手紙を、これまで何回、読み返しただろう。ハンデを乗り越えて目標をかなえる姿に、いったい何度、励まされただろう。福井市の植出洋美さん(64)は、生まれながら両足が不自由な息子の良寛(よしひろ)さん(33)が、14歳のときに書いたメッセージを、忘れずに生きている。

 1989年の夏、洋美さんは福井市の病院で良寛さんを授かった。約2100グラムの小さな背中に、こぶが見つかった。背骨の外に脊髄(せきずい)が突き出る「二分脊椎(せきつい)」と診断された。

 抱きしめる間もなく、良寛さんは金沢医科大学に運ばれた。緊急手当てを受けたが、脳の信号が足に伝わりにくい障害が残った。医師からは「歩けないかもしれない」と告げられた。

 洋美さんは自責の念に駆られた。妊娠中に体調を崩したからかもしれない。何か別の理由があるのだろうか。良寛さんが退院するまで1年以上待った。

A-stories「あなたに届け 日本一短い手紙」(全7回)

日本一短い手紙のコンクール「一筆啓上賞」が始まって30年になりました。これまでの作品に秘められたストーリーを届けます。

 退院後の良寛さんは、洋美さんの予想を超える成長を見せた。1歳下の弟が歩き出すと、良寛さんも負けじとひざで歩いた。物心つくとプロ野球選手にあこがれ、ひざ立ちでキャッチボールをした。弟が少年野球でショートを守れば、客席で歩行用の杖を握りしめて声援を送った。

「ごめんね」は愛情表現のつもりだった

 「よっちゃん、ごめんね」…

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