「リアル妖精」「孤高の天才」バレエダンサー・二山治雄の現在地

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文・岩本美帆 写真・吉田耕一郎
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 「まるで永遠に下りてこないよう」と言われる長く高い跳躍に、どんな超絶技巧も難なくこなす身体能力を持つバレエダンサー、二山治雄さん(26)は、世界中のバレエファンが注目する存在です。「リアル妖精」「天才」と呼ばれる二山さんですが、パリ・オペラ座では挫折感を味わい、帰国。実家近くのスーパーや老人介護施設でアルバイトをしていた時期もあったといいます。再び舞台に立ち、喝采を浴びるようになった心境の変化や、今後めざすダンサー像などについて聞きました。

【動画】バレエダンサー・二山治雄さん=吉田耕一郎、岩本美帆撮影

 ――バレエダンサーとしては珍しい、フリーランスの立場ですね。毎週のように公演があり、「二山治雄」の名前でお客さんを集められる存在です。

 本当にありがたいことです。僕なんかでいいのかなと思います。一緒に踊る同年代のダンサーたちは有名バレエ団のプリンシパルなどの肩書があるのに僕はなくて、そこがちょっとコンプレックスなんです。パリ・オペラ座の契約は2019年の大みそかまでで、帰国したのは20年初めだったのですが、僕はSNSでの発信をほとんどしないので、日本にいることをみんなあまり知らなくて。「どうも日本にいるらしいぞ」という話が広まって、昨年末から本格的にお声をかけていただけるようになりました。

ひとり泣いた パリでの苦しい日々

 ――パリ・オペラ座での日々は大変だったそうですね。

 パリがなければ今の自分はいませんが、苦しいことも多くて、ひとりで泣くこともありました。オペラ座の中でも外でも人種差別に遭いましたし。僕は英語はできるのですが、はなから仏語も英語もできないと決めつけられて無視されることがあった。役所での手続きひとつとっても、僕ひとりで行くと適当にあしらわれて対応してもらえないのに、フランス人の友人と行くととても丁寧に対応されるなど、色々ありました。

 欧米は選ばれた人間がバレエ…

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