仲間の分も音に気持ち乗せ 帝京長岡高、コロナ濃厚接触者をカバー
吹奏楽コンクールの新潟県大会を2日後に控えたときだった。父親が新型コロナウイルスに感染。妹、弟、母親も次々と陽性が判明した。帝京長岡高校(長岡市)の藤田涼太郎さん(2年)は親戚宅に身を寄せ、検査の結果は陰性だった。しかし、濃厚接触者と判定された。
「申し訳ない」。うなだれていると、部長の吉荒璃子さん(3年)が声をかけてくれた。「ちゃんと代表選考会に進むから安心して。そしたらまた涼太郎とも演奏できるでしょ」
同校が出場する高校Bの部(30人以下)では、全出場校から10校に絞り込んだ代表選考会があり、うち5校が西関東大会の県代表に決まる。まずは代表選考会を目指した。
1人欠ける影響は小さくなかった。藤田さんのアルトサックスのパートは、バリトンサックスの3年生がカバーすることに。音の厚みや音量が不足する不安もあった。「協力してカバーしていこう」と声をかけ合った。
代表選考会への進出をトップで決めた。「涼太郎の分も、というみんなの気持ちが音に乗っかったんだと思う」と吉荒さん。翌週の代表選考会には藤田さんが戻ってきた。「緊張したけど、音楽ができることに感謝の気持ちでいっぱいだった」。西関東大会出場を勝ち取った。
藤田さんは通学に1時間半かかる。午前6時ごろに家を出て、帰宅するのは午後8時半ごろ。夜の練習があれば10時半になる。吹奏楽漬けの日々を送り、「コンクールを目指して練習できることが何よりうれしい」と言う。
中学も吹奏楽部だったが、3年生最後のコンクールは新型コロナの感染拡大で中止になった。目標がなくなり吹奏楽を離れた人も。自身も積み重ねてきた努力が報われない悔しさを味わった。「ここであきらめたくない」。進学先に同校を選んだのも強豪校だから。あのまま終わりたくなかった。
11日に西関東大会が迫るなか、今度はバリトンサックスの3年生が新型コロナの濃厚接触者と判断された。1週間ほど練習に参加できなかったが、間に合った。みんなでブランクを埋め、本番に臨む。
顧問の宮城功次教諭は「感染してはいけないという緊張感と闘いながら練習を続けてきた。誰が悪いわけでもない。困難を乗り越えた先に結果がついてくると信じたい」と話す。(西村奈緒美)
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