職人も音を上げた超リアルな「将棋駒パスタ」 甘い香りも攻めの一手

坂田達郎
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 将棋駒の生産量日本一、山形県天童市の新たなみやげ物として、「将棋駒パスタ」が誕生した。ゆでた後も口の中で駒の形を感じられるうえ、ほんのりと甘い香りが特徴だ。その秘密は、これまで捨てられてきた地元特産の果物にあった。

 市内にあるジェイエイてんどうフーズの産直店サンピュアが「天童ならではのパスタを」と考え、玉谷(たまや)製麺所(山形県西川町)と共同開発した。同社には雪の結晶や桜、サクランボの形をしたパスタなどデザイン性に富んだ商品を手がけてきた実績があった。

 「もったいない」。製麺所専務の玉谷貴子さん(44)は、地元で生産するラ・フランスの摘果(てきか)作業で間引かれる実が多いと知ると、さっそく県村山総合支庁を通して市内の農家から廃棄予定の実を集めた。

 天童市はラ・フランスの生産量でも日本一を誇る。実を大きく育てるため、間引く作業は欠かせない。

 パスタに生かせるという手応えはあった。糖分が多いものを練り込むとコシがなくなって、食感が悪くなる。だが、甘くなる前の実ならうまくいくかもしれない――。これが香りの元になった。

 デザインについては天童市の将棋駒製造「中島清吉商店」に意見を聞いた。人気の「王将」、飛び回れる「飛車」、どこにでも進める「と」のほか、馬の字を逆さにした天童独自の縁起駒「左馬(ひだりうま)」の4種類に決まった。

 取引のあるイタリアの職人に金型を発注した。当初は「細かすぎてできない」などと言われたが、デザインを変えながら2カ月以上をかけて完成した。

 パスタの原材料には、デュラム小麦とラ・フランスのペースト、食塩を選んだ。栄養成分を調べると、ポリフェノールが豊富に含まれていることもわかった。仙台市であった商談会では、百貨店バイヤーらからパッケージについて助言を受けるなどした。

 玉谷さんは「多くの人の協力で将棋駒パスタがうまれた。摘果作業で出たラ・フランスが広く使われれば農家さんも幸せだと思う」と話す。

 100グラム入り432円(税込み)で、サンピュアや玉谷製麺所の直売店「つぉろの舗」などで販売。問い合わせは同製麺所(0120・77・5308)へ。(坂田達郎)

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